【国際大会レポート】UIAA アイスクライミング 北アメリカチャンピオンシップ2022 – オウレイ, USA

2022年2月4日~6日、アメリカ合衆国コロラド州のオウレイ(またはユウレイと発音する)にてアイスクライミングの北アメリカ選手権が開催された。

今大会は、北アメリカ選手権という名称ではあるが、北アメリカ以外の選手も参加が可能となっている。日本からは竹内春子と笹川淳子の2名が参戦した。それ以外の国は、チェコのロウゼッカ・アニタ、ポーランドのJabłoński Jędrzej(USA在住のようだ)がエントリーした。

日本人選手プロフィール

笹川淳子

笹川淳子

プロフィール

女子山岳集団・銀嶺会の副代表を務めるアルパインクライマー兼コンペティター。年齢を言い訳にしないバイタリティと、ポジティブマインドが持ち味。

今シーズンは、ヨーロピアンカップ第5戦(リヒテンシュタイン)、世界選手権(スイス)に続き、今大会が3戦目となる。

竹内春子

竹内春子

プロフィール

日本人女子では最強との呼び声が高く、持久力とテクニックで世界トップレベルで戦える数少ない選手。

前節の世界選手権では、その実力を発揮し、見事にファイナル進出。アジア人では最高位の7位をマークした。

今シーズンは笹川淳子と同じく、3戦目の挑戦となる。

オウレイ・アイスパークで異彩を放つ人工壁

今大会の舞台は、アイスクライマーにとっての天国とも言える場所、オウレイ・アイスパークだ。

このエリアは、谷の上にパイプが通っており、冬が始まるころから放水を開始する。やがて、谷一帯は氷漬けとなり、そこかしこでアイスクライミングやミックスクライミングを楽しむことができるのだ。

そんな岩と氷が広がるアイスパークの景観の中、崖の上に聳える6m程の人工壁が来訪者の目を引く。

この人工壁は毎年行われているオウレイ・アイスフェスティバルの目玉企画「エリートミックスクライミングコンペティション」で使われている壁だが、今回の北アメリカ選手権でも同じ壁が使われた。

対応力が問われるコンペ

今大会はリード競技の予選が2課題、決勝が1課題用意された。予選の1課題目は氷セクションがメインであり、2課題目は岩セクションがメインとなる。それぞれ自然物を対象にしたアイスクライミング、ドライツーリングの技術が要求される。

氷と岩が混じる崖を突破した先に待つのは、前述した人工壁だ。ここからは純粋なコンペのフィールドとなり、容態が一変する。

異なる特性を持った各セクションを如何にシームレスに処理できるか、対応力が試される。

快進撃の竹内、意地を見せた笹川の奮闘!

まずは日本人選手のリザルトをご覧いただこう。

女子リード

順位名前
2位竹内春子
7位笹川淳子

女子スピード

順位名前
6位竹内春子
7位笹川淳子

リード種目では、竹内春子が実力を発揮し、準優勝に輝いた。

今大会は参加選手数が非常に少なかったとは言え、アイスクライミングの国際大会において、日本人女子選手の最高記録を塗り替えた。

また、予選1課題目を苦戦した笹川淳子も2課題目で挽回し、すべりこみでファイナルへ進出。最終的には、7位まで順位を上げることに成功した。

二人の決勝の登りはYouTubeでご覧いただけるため、ぜひ振り返っていただきたい。
※スピード種目の映像はなし

決勝レポート

笹川淳子

2番手で早々と登場したのは笹川淳子。

アイスパートをサクサクと突破し、テンポよく岩のセクションへ手を進める。だが、ここからいきなりのオーバーハングとなる。

人工ホールドとは異なり、岩壁のどこにアックスをフッキングできるのかがパッと見でわからない。

おそらくマーキングはされているだろうが、それでも岩のアックス登攀に慣れていないと突破は難しい。

途中ヒヤリとする場面もあったが、無事に突破した。
人工壁の下部で数手出したところでタイムアップとなった。

足がキレてヒヤリ
傾斜の強い岩のセクション

竹内春子

アイスパートを順当に超え、岩のセクションに入る。ここではフィギュア4を何度かくり出し、手数を減らしていく作戦をとった。

その甲斐あって、残り3分ほどのところで人工壁に到達。

そこからの登りも終始安定しており、着実に手を進め、最終ホールドに荷重したところでタイムアップとなった。

両名とも10分間の登攀時間をフルに出し切った結果となった。

フィギュア4で高度をかせぐ
後1手で最終ホールド&最終クリップ
登攀後インタビュー

表彰台リザルト

男子リード

順位名前
1位ファウラー・ウェスリーUSA
2位リンドル・ケヴィンUSA
3位ケンプニー・タイラーUSA

優者したファウラー・ウェスリーは、映像で見たときにやたらと手足が長いと思ったが、身長はなんと2m!コーチにケンプニー・タイラーの名前を挙げており、師匠超えを果たした。

2位はリンドル・ケヴィン。実は日本人選手と親交が深い。2017年10月に来日した際、岩根山荘で行われたドライツーリングコンペで圧倒的な実力で優勝している。当時より、さらにパワフルな登りを見せてくれた。

3位は前月に行われたエリートミックスコンペの覇者ケンプニー・タイラーが表彰台にあがった。

女子リード

順位名前
1位シャーリー・カタリナUSA
2位竹内春子JPN
3位ブーヘイ・コーリーUSA

北アメリカ選手権のため、純粋にアメリカ人のみの順位付けになると、2位がブーヘイ・コーリー、3位がシャルテル・ローレンとなる。

優勝したシャーリー・カタリナはなんとまだ19歳の選手。今後アメリカのアイスクライミング競技を牽引していくエース的な存在となるだろう。

まとめ

今大会は、北アメリカ選手権ということで、エリートミックスクライミングコンペのように様々な国籍の選手が登場するわけではなかったが、アメリカの若い選手の活躍が目立った。じわじわと選手層が厚くなってきているのを感じる大会だった。

それから今回は、各選手の紹介映像が流れるなど、演出が他の大会と異なり、ゴージャスであった。

スポンサーのアウトドア・リサーチの協力によるものだったのだろうか。

なんにせよ見る側としては、各選手についてより知ることができる機会となり、非常にありがたかった。

早いものでアイスシーズンももう折り返し。

残すはヨーロピアンカップと欧州選手権、そしてワールドカップとなるが、日本人選手がエントリーしているのはワールドカップのみとなる。(韓国での開催は中止が決定)

次の戦いでも日本人選手の活躍に期待したい。