2023年2月25日、26日にわたりフィンランド第四の都市、オウルでヨーロピアンカップ最終戦が行われた。
日本から中島正人、竹内春子がエントリー。
奮闘の模様をレポートしていく。
ちなみに、ワールドユースチャンピオンシップスも同時開催となり、U16、U19、U21の年齢別で競技が行われた。
会場の様子
予選結果
順位 | 名前 |
---|---|
8位 | 竹内春子 |
12位 | 中島正人 |
一歩届かなかった中島正人
男子は40名の選手がエントリーした中で、中島正人は12位と上位につけるも、残念ながら予選敗退となった。同率9位が3名おり、2課題目をあと1クリップできていたらその3名を抜き、予選通過が可能だっただけに、悔しい結果だ。
今シーズン全戦予選通過の竹内春子
竹内春子は1課題目の下部でミスをしてしまい、まさかのフォール。一時的に最下位となる。予選通過が非常に厳しい状況であったが、決してそのまま崩れるようなことはなかった。2課題目ではしっかりと実力を発揮し、2位につけた。挽回した甲斐もあり、2課題の合計順位で8位に入り、辛くも予選を通過した。
詳細は以下参照(外部サイトへ遷移します)
絶妙な調整の予選課題
予選リザルトと参照すると、1課題でも完登できたのは、男子ではヴァージル・デヴィン(FRA)、女子でマリアンヌ・ヴァンデル・スティーン(NED)の2名のみ。他の選手たちはギリギリ完登できずという結果となった。
セッター目線でいくと、ひとつの課題に完登者を一人だけ出すように調整できるのが良いと聞く。
今回は概ねセッターの思惑通りといったところだろうか。到達点を見る限りでは、女子の1課題目は、難易度が相当高めだったことが伺える。
決勝の様子
ライブ配信された決勝の模様は、前半でU19とU21のトライがあり、後半からシニアのトライが確認できる。
竹内春子の登場は2:28:54あたりだ。
女子決勝
ユース(U19、U21)と同じルートとなるためか、割とシンプルな構成になっていた。
メイン構造体であるピラーを延々と登っていくルートで、単純に垂壁ではなく、薄被りになっているためじわじわと体力が削られていく。
如何に速く登攀出来るかがポイントになる。
ユースの競技が終わり、早々に登場した竹内春子。
サクサクと登っていき、見事決勝課題を完登した。
40秒近く残すほど余裕を見せる登りとなった。
その後の選手達も続々と完登が続き、予選とは打って変わって最終的には完登者が5名となった。
男子決勝
一方男子ルートはユースと同じとは言え、非常に厳しいルートになっていた。
何よりも中間部の渡りが厳しい。
スタートの壁から対岸のピラーへ渡るのに10手ほど空中戦を強いられる。
渡り始めてすぐ、つららを模したボテに移るが、そこから上部への一手が選手達をことごとく退けた。
通常、フィギュア4の体勢から次の手を出す場合、手首に掛けた足とは逆の足でどこかを蹴って推進力を得るのだが、このつららを模したボテではどこも蹴ることが出来ず、選手達は対応に苦戦した。
この核心部を突破し、次の六角柱に乗り移れたのは僅か3名で、ヴァージル・デヴィン以外はその六角柱でフォールしている。
リザルト
女子リザルト
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | マリアンヌ・ヴァンデル・スティーン | NED |
2位 | エンニ・バトリン | FIN |
3位 | 竹内春子 | JPN |
総合優勝が確定しているマリアンヌ・ヴァンデル・スティーンがさらに栄誉を獲得する結果となった。
2位につけたのは地元民のエンニ・バトリン。
そして、とうとうヨーロピアンカップに風穴を開ける活躍を見せたのは我らが竹内春子だ。
ブルノ、グラスゴーと4位が続いたが、3度目の正直で表彰台に立つことができた。
男子リザルト
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | ヴァージル・デヴィン | FRA |
2位 | ケビン・リンドル | USA |
3位 | デニス・ヴァン・フック | NED |
首位のヴァージル・デヴィンは初戦のスロバキア以外ですべて1位を獲得。
圧倒的な強さを見せた。
2位となったケビン・リンドルは今シーズン初参戦の国際大会だった。
3位デニス・ヴァン・フックは総合成績で2位の結果となった。
おまけ情報。アイスツール使用状況
アイスアックス使用率
モデル名 | 使用率 | |
1 | クルコノギ アンカーシリーズ | 35% |
2 | ICE ROCK ASPEED | 15% |
3 | ICT リボルト | 10% |
その他 | 40% |
今大会もアンカーとASPEEDの使用率は相変わらず高かったが、ノミック使用者が少なかった。3位のリボルトはイランのギアメーカーであるICT製アックスだが、形状がアンカーによく似ている。ヨーロッパのコンペシーンでは、ICTの存在感が徐々に増している印象だ。その他、Forecast equipmentのNor*Easterやブラックダイヤモンドの初代フュージョン、JETB、オクタと様々なツールが確認できた。
フルートブーツ使用率
モデル名 | 使用率 | |
1 | スカルパ レベルアイス | 40% |
2 | スポルティバ メガアイス | 30% |
3 | アゾロ コンプXT | 10% |
4 | ICE ROCK ROCKET | 10% |
その他 | 10% |
フルートブーツ使用率の傾向に大きな変化は見られない。2大モデルのシェアが圧倒的に高く、第三勢力の登場が待ち遠しい。
まとめ
室内で行われたグラスゴーと違い、オウルはマイナス10度にもなる極寒の中行われた。
厳しい状況の中でも、竹内春子が表彰台に立ち、これまでの経験をしっかりと結果で証明した。
中島正人も最終戦こそ決勝進出を逃したが、毎回安定して上位に入り、強豪ひしめく国際大会で威風堂々とした素晴らしい戦いぶりを見せた。
そして選手たちは少し羽を伸ばした後、また次のシーズンへ向けて日々研鑽していくことになるだろう。来シーズンも日本選手の活躍に大いに期待したい。