2023年2月18日、スコットランドのグラスゴークライミングセンターでヨーロピアンカップ第3戦が行われた。
日本からは中島正人、竹内春子が参戦!
教会でクライミング!?
驚きなのは今回の舞台。
教会をリユースしてつくられたクライミングジムということだが、外観からはそもそも中がクライミングジムだとはとても想像出来ない。
そして中に入ってしまえばパッと見ジムだが、天井付近に目をやると教会であったことが伺える。
カフェも併設されており、地元民に親しまれているようだ。
予選結果
予選は2課題あり、フラッシュ形式で行われた。
中島正人、竹内春子両名とも見事に予選を突破。
順位 | 名前 |
---|---|
1位タイ | 中島正人 |
6位 | 竹内春子 |
男子予選2ルートの完登者は5名で、その中に中島正人が入り、素晴らしい成果を収めた。
女子予選2ルートの完登者は無し。 1課題目の4クリップが出来たかどうかが1つのボーダーラインとなった。
詳細は以下の通り(外部サイトへ遷移します)
決勝の様子
決勝はバグパイプの音色と共にファイナリスト達が入場。そこからオブザベーションタイムとなる。
ルートの概要
男子ルートのスタートはツーバイをフィギュア4、フィギュア9で渡るところから始まるが、そこから先は男女ともにほぼ同じ登攀ラインとなっていた。
下部にあるいくつかのギミックを突破し、中間部のキューブへ。
キューブの上からダイノを決めるとさらにキューブを2つ渡る。
そこからルーフを進み、角柱に乗り移りラストのキューブでフィニッシュとなる。
ギミック満載の欲張りルート
スタートしてすぐに、屋内にもかかわらずアイスバレルが出現する。
今大会唯一のアイスクライミング要素だ。
次はすかさず振子ムーブでダイナミックに動く。
中島正人は一撃でここを突破。
ルートとなる壁には板が貼られていて、バウンダリーの役割も兼ねていた。うっかりバウンダリーアウトしてしまわないよう注意が必要だ。
運命の分かれ道
振り子ムーブを決めると、次は極悪なメタルホールドからキューブに付くボールホールドをとることになる。
女子の場合は近くにもう一つホールドがあるので大したことはないが、男子の場合はこの極悪なホールドでハードムーブを起こす必要がある。男子ルートの核心部と言っていいだろう。
男子は中島正人他3名がここでフォールとなった。
ボールホールドを取ったあとは、アックスが外れないように反対の面に付くホールドをとることになるのだが、オブザベーションをミスするとホールドの存在を忘れ、その次のホールドを無理やり取ろうとして苦戦することになる。
見えてくる別の道
極悪メタルホールドからボールホールド取る一手だが、実は回避が可能だ。
上位になった選手はバジル・フェテ以外、見事にホールドを飛ばして突破している。
中でも最も華麗に突破したのはヴァージル・デヴィンで、フィギュア4で手堅く次のホールドをとっていた。
逆にハードムーブで突破した選手はバジル・フェテとトム・フィリップスの2名で、真っ向勝負している様は必見だ。
鉄板のダイナミックムーブ
核心部を越えるとやってくるのは最早お馴染みのダイノムーブだ。
会場のMCが観客を煽り、選手達を奮い立たせる。
意を決してジャンプし、次のキューブへ飛び移る。
立て続けに現れる構造体
ダイノを決めた後は空中戦となる。
まずはキューブを渡っていくのだが、ここのホールド配置も中々で、キューブの背面にあるため見えにくい…。
しっかりオブザベーションができていないと見失ってしまうだろう。
突起状ホールドであるのでフッキング自体は容易いことが救いか。
空中戦はまだまだ続き、キューブを越えるとコンパネ一枚分のルーフを進む。
ここまでの道中でかなり消耗してきているところだが、ホールドの向きにより簡単に進ませてもらえない。
そして、ルート終盤は揺れに揺れる角柱に乗り移る。
ここでオランダのデニス・ヴァン・フックがファインプレー 。
角柱に移る前に体制を崩し脚ブラになるも、手で角柱を引き寄せ、乗り移りに成功し会場が沸く。
最後のキューブたどり着けたのはフランスのヴァージル・デヴィンただ一人。
キューブを半周してようやくフィニッシュとなる。
リザルト
日本人選手結果
順位 | 名前 |
---|---|
4位 | 竹内春子 |
7位 | 中島正人 |
快進撃を続ける竹内春子
竹内春子は表彰台に僅か0.01ポイント届かず4位。
ブルノでも4位であったが、いよいよトップ3まで迫ってきた。次の会場では壇上に立てるか期待が高まる。
またしても魔物に食われる中島正人
中島正人は残念ながら下部に現れる最初の核心部を突破できなかった。今回、予選順位を1位につけていただけに非常に悔しい結果だ。きっと最終戦では活躍する姿を見せてくれることだろう。
女子リザルト
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | マリアンヌ・ヴァンデル・スティーン | NED |
2位 | オルガ・コゼック | POL |
3位 | マジャ・ススター・ハブジャン | SLO |
首位はマリアンヌ・ヴァンデル・スティーン。
配信ではゴールまで登攀したが、記録では9クリップでタイムアップとなっていた。
第3戦を終えた時点で2度首位に立つ結果となり、総合優勝は盤石なものになっただろう。
2位のオルガ・コゼックは今期リードで表彰台に立つのは初となった。
3位マジャ・ススター・ハブジャンはジリナ3位、ブルノ4位と上位をキープしている。
男子リザルト
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | ヴァージル・デヴィン | FRA |
2位 | デニス・ヴァン・フック | NED |
3位 | バジル・フェテ | FRA |
ヴァージル・デヴィンはブルノに続き首位獲得。総合優勝争いで頭一つ出た形だ。
2位のデニス・ヴァン・フックは逆転総合優勝を狙える位置となった。
ブルノでも3位のバジル・フェテは今回も安定した強さを発揮した。
おまけ情報。アイスツール使用状況
3大メジャーアックスの他は、ICTやエリートクライムなど、日本では滅多に見ないメーカーの存在が際立っていた。フルートブーツでは、ICE ROCK ROCKETが使用率3位となった。
アイスアックス使用率
モデル名 | 使用率 | |
1 | クルコノギ アンカーシリーズ | 30% |
2 | ICE ROCK ASPEED | 20% |
3 | ペツル ノミック | 10% |
3 | エリートクライム モルフォ | 10% |
3 | ICT Dragon2 | 10% |
その他 | 10% |
フルートブーツ使用率
モデル名 | 使用率 | |
1 | スカルパ レベルアイス | 45% |
2 | スポルティバ メガアイス | 20% |
3 | ICE ROCK ROCKET | 15% |
4 | アゾロ コンプXT | 10% |
その他 | 10% |
まとめ
スコットランドで行われる初のUIAA アイス クライミング ワールド ツアーのイベントということで、ルート、運営、会場とかなり気合の入った大会だった。
屋内での開催ということで、スポットライトによる演出なども良かったが、配信映像としてはもう少し明るさが欲しいところだった。
可能ならば現場に足を運んで観戦したい。
いよいよヨーロピアンカップも次がラスト。
フィンランドはオウルの地で中島正人、竹内春子の活躍が見れることを期待したい。
粋なメッセージ
決勝ルートでダイノを決める時、ホールドの脇に応援メッセージがあった。
ダイノは非常にリスクのあるムーブだ。多くの選手が飛ぶ前に躊躇いがある。そんな選手の気持ちに寄り添ったメッセージに感動を覚える。