
2024年6月25日に長野県上田市にあるクライミングジム「ねこねこウォール」でドライツーリングコンペ「たらこチャレンジコンペ」が開催された。
たらこチャレンジとは?

※IWC女子選手向けのコンペ形式練習会から派生したコンペ。
初めてコンペに参加する人や、他の人の登りが見たい人はフラッシュ、緊張感を味わいたい人はオンサイト等、各自の経験や力量にあわせてトライできるマイルドなコンペなのが特徴。
(※Iwc climbing World Cup)
コンペのルール

- フルートブーツ着用、蹴り込みありのボルダースタイル。
- 参加者はトライ方式をオンサイトかフラッシュかを選択可能。
- 順番はクジ引きを行い、オンサイト組→フラッシュ組の順番で登る。
- 予選課題は3本、各制限時間は3~4分。
- 予選結果(ポイント)でグループを「にわとり🐔(上級者向け)」と「ひよこ🐤(初級者向け)」に分けて、全員が決勝に進出。
順位づけの方法
- 到達高度のカウント、到達高度は、2023-2024シーズンのW杯を参考に次のようにカウントする。1手進むごとに「1」が加算される。次のホールドをタッチした場合は0.1、アックスをかけて保持した場合は0.2が加算される。
- ゴール(G)まで到達する者が複数名いた場合、タイムに関係なく全員1位とする。
- 3つのルートの順位(ポイント)を掛け算した合計点を競技成績とし、より合計点の少ない者が上位となる(例: 2位×3位×4位=24ポイント)。
- ただし同順位のものが複数いた場合、ポイントは次のように算出する(例:1位が4人いた場合は、(1+2+3+4)÷4=2.5。4人にそれぞれ2.5ポイントが与えられる)。
参加者
スタート順 | 参加者 | トライ方式 |
1 | 謎のクライマー(※1) | オンサイト |
2 | 笹川淳子(銀嶺会) | オンサイト |
3 | 上原久美子 | オンサイト |
4 | 佐々木健人 | オンサイト |
5 | 原顕子 | オンサイト |
6 | 川越賢二 | フラッシュ |
7 | 原山直子 | フラッシュ |
8 | 瀬山稜介 | フラッシュ |
9 | 田名網宣成 | フラッシュ |
10 | 猪俣太郎 | フラッシュ |
11 | 渡邊(スギロー) | フラッシュ |
※1.エントリー名そのまま
新勢力!? ice pointからの刺客

今回は猪俣太郎、渡邉(スギロー)、瀬山稜介、3名のice point出身者がコンペに初参加。ice pointとは青梅市にあるドライツーリングのプライベートジムで今回はice pointで日々トレーニングを重ねてきた彼らがどんな登りを見せるのかも注目だ。
予選課題
第1課題:垂壁19手
壁の強度は低い代わりに繊細なピックコントロールやバランス感覚が求められる課題。序盤に登場するメタルホールドの処理に苦戦する選手が続出した。


第2課題:傾斜壁18手
中盤に出てくる特徴的な金属ホールドの処理が核心。苦戦する選手が多く、時間切れになる選手が続出した。

※アックスの持ち手を使うムーブ

第3課題:強傾斜壁20手
最も強度の高い課題でフィギュア4等のドライツーリング特有のムーブが必要とされる。強傾斜壁から吊るされたボックスへフィギュア4で乗り移る空中パートが核心。この処理で苦戦する選手が多かった 。


予選結果
コンペ初参加の猪俣太郎、渡邉(スギロー)が1位、2位で突破。続いて前回優勝の田名網宣成が3位という結果になった。予選課題はフラッシュ組が有利な部分もあったが、結果はオンサイト組もフラッシュ組もバランスよく各グループに分かれることとなった。
順位 | 「にわとり」決勝出場者 | ポイント |
1位 | 猪俣太郎 | 3 |
2位 | 渡邊(スギロー) | 6 |
3位 | 田名網宣成 | 75 |
4位 | 佐々木健人 | 120 |
5位 | 上原久美子 | 126 |
6位 | 謎のクライマー | 157.5 |
7位 | 瀬山稜介 | 225 |
順位 | 「ひよこ」決勝出場者 | ポイント |
8位 | 原顕子 | 472.5 |
9位 | 笹川淳子(銀嶺会) | 495 |
10位 | 川越賢二 | 654.5 |
11位 | 原山直子 | 935 |
決勝課題
ひよこ決勝
傾斜壁からルーフ壁、垂壁へと移動する22手の課題。
予選第2課題でも使用されたメタルホールドへの下降と後半のルーフに取り付けられたセクターホールドの処理が核心となり、完登者は現れなかった。


順位 | 「ひよこ」決勝結果 | 到達ホールド |
1位 | 原顕子 | 16.2 |
2位 | 笹川淳子(銀嶺会) | 13 |
3位 | 川越賢二 | 6.2 |
4位 | 原山直子 | 4.2 |
ひよこ決勝は昨年に引き続き、原顕子が2連覇を達成 。次回は是非にわとり決勝を目指してほしい。
にわとり決勝
垂壁からルーフ、傾斜、強傾斜へと移動する24手の課題。
過去のIWC中国大会を彷彿とさせるスリングへの乗り移りや近年ドライツーリング界隈でも増えてきたランジパート等、、、バリエーション豊かな構成。


順位 | 「にわとり」決勝結果 | 到達ホールド |
1位 | 上原久美子 | 23.1 |
2位 | 猪俣太郎 | 23 |
3位 | 瀬山稜介 | 22 |
4位 | 渡邊(スギロー) | 19 |
5位 | 田名網宣成 | 18 |
5位 | 謎のクライマー | 18 |
7位 | 佐々木健人 | 15.1 |

最高到達点で上原久美子が優勝。IWC選手としての威厳を見せた素晴らしい登りだった。また惜しくも2位になった猪俣太郎もコンペ初参戦とは思えぬ落ち着いた登りで会場を魅了した。
道具について
コンペで使用された道具を集計。韓国製アックスのオクタ、ジェットの使用率が高かった。また中にはいわゆるコンペティション用ではないアックスで参戦した猛者クライマーもいた。
使用アックス | 人数 |
オクタ | 4 |
ジェット | 2 |
クルコノギ/ アンカー 4 | 1 |
アイスロック/ ロングアスピード | 1 |
ペツル/ ノミック | 1 |
カシン/ Xドリーム | 1 |
ブラックダイヤモンド/ コブラ | 1 |
使用シューズ | 人数 |
スカルパ/ レベルアイス | 5 |
スポルティバ /メガアイス | 3 |
スカルパ/ リベレアイス | 2 |
ケイランド/ ドライドラゴン | 1 |
最後に
今回のコンペは初参加から実力者まで幅広い層の選手が参加した。
翌日行われたセッターの講評によると、決勝課題は「ひよこ」と「にわとり」の難易度の差はほとんどなく、参加者の技量を考慮した上で全員が予選も含めた全ての課題を半分以上登れるような難易度でセットしたとのこと。その中で落としどころや盛り上がりどころ等多数あり、素晴らしいセットだった。
コンペの課題はしばらくは残るので、興味があれば是非ねこねウォールへ足を運んで欲しい。