ドライツーリング(drytooling)とは?
ドライツーリングとは、岩稜帯または人工壁において、アイスアックスとクランポンを用いて登るスタイルのクライミングです。ドラツーと略すこともあります。
氷瀑を登攀対象にするアイスクライミングから発展した形で、氷と岩が入り混じるルートを登攀対象にするミックスクライミングというジャンルがあります。
ドライツーリングはさらに発展した形で、岩の部分のみにフォーカスした登攀スタイルであり、ルート上の強点をついて登ります。
道具を用いるという意味でエイドクライミングとも言えますが、人工壁やボルトの打たれたスポートルートもあり、フリークライミングとしての一面も持ち合わせます。
強傾斜の岩壁でのドライツーリング 人口壁でのドライツーリング練習
また、岩・氷・雪が混じる冬期アルパインクライミングにおいて、 岩の剥き出した部分を手を使わずにアイスアックスとクランポンで登ることをドライツーリングと呼ぶこともあり、スポーツクライミングとしてのドライツーリングは日本ではまだまだ認知度は低いと言えます。
ドライツーリングは広義では、ミックスクライミングの一種とも言えますが、氷瀑を必要としないため、季節を問わず一年を通して楽しむことができます。そのため、アイスクライミングやアルパインクライミングのオフシーズンの練習としてもドライツーリングは度々行われます。
ミックスクライミングの様子1 ミックスクライミングの様子2
北海道の神居古潭や宮城県の二口渓谷など、日本にもミックスクライミングができるゲレンデがいくつかあります。 多くの場合、ミックスクライミングのルートは、冬期以外の3シーズンにおいてはそのままドライツーリングのルートとして登られています。
また、宮城県の鎌倉山など、純粋なドライツーリングのルートが開拓されているゲレンデもありますが、公開されているエリアは非常に限られています。
神居古潭 鎌倉山
ミックスクライミングでは、ルートのグレード表記を「Mグレード」で表します。北海道神居古潭の「斬鉄剣」がM11+となっており、日本の難関ルートとして有名です。対して、ドライツーリングでは「Dグレード」で表します。宮城県二口渓谷の「鳥獣戯画」が推定D13と言われており、ドライツーリングルートとしては国内最難関との呼び声が高いです。
グレード表記の詳細は以下の記事で紹介しています。
競技としてのアイスクライミング
国内外でドライツーリングは競技としても行われており、少々わかりづらいですが、アイスクライミングのコンペと銘打って開催されることが多いです。
アイスクライミングのコンペでは、実際の氷がルート全体を占めるわけではなく、アイスアックスをフッキングするための人工ホールドやクランポンを蹴り込むためのコンパネが使われることがほとんどです。
また、マグロと呼ばれる木材や金属のチェーン等、パターンの富んだオブジェクトがよく吊るされ、フィギュア4・フィギュア9のムーブを頻繁に使うことが特長です。
アイスクライミングのコンペの競技内容は実質的にドライツーリングとなっており、UIAAアイスクライミングワールドカップにおいても、これは同じです。
アルパインのシーンではあり得ないような傾斜やアクロバティックなムーブが求められることもあり、ドライツーリング特有の技術が試されます。

アイスホールドへの打ち込み(昭島ドライツーリングコンペ) Ouray Ice Festival 2018 ミックスクライミングリードコンペの様子(アメリカコロラド州)

進化するドライツーリングギア
近年、登攀用具の発展も目覚ましく、これまでアルパイン、アイスクライミングのシーンで使われてきたギアに比べ、よりコンペ仕様に特化した先鋭的なアックスやピック、アイゼン一体型のブーツ(=フルートブーツ)が登場しています。高難度の課題を求める競技志向の選手の間では、これらの装備が標準になりつつあります。
ドライツーリング(drytooling)は、toolという名の通り、道具によって有利不利に大きく差がつくことがあります。道具を知り、自分にとって最適なチューニングを施すことも重要になります。
しかしながら日本では、未だにこれらのギアの入手難易度が高く、練習環境も限られているため、スポーツクライミングのジャンルとしては非常にマイノリティーな存在となっています。
本サイトでは、そんなドライツーリングの魅力をひとつでも多く紹介できればと思っています。