ドライアックスを考える

ドライツーリングもやるCrackClimberアイロンです、こんにちは
私もそうですがアイスの練習のついでにドライツーリングも、、、と思ったらいつの間にかドライツーリングにハマっちゃう人多いですよね。

そんな状態である程度ドライツーリングをやっていくと周りの人たちと自分のアックスやピックが違うのに気が付きます。そう、その道の人はドライ専用アックスやピックを使っている事が多いのです。

ここでは一般には知られていないアイスクライミング用とドライツーリング用のアックスの違いから、どの様な特徴があるのかまでに光を当ててみたいと思います。

アックスの種類

アックスはもともと登山で使用されていて、日本ではドイツ語のピッケルという名で広まりました。

現在では大まかに「登山用」「アイスクライミング用」「ドライツーリング用」と分別できるのですが実際にはグラデーションで別れていて、ノミックのようにアイスとドライのハーフのようなアックスも多々あります。

この記事ではアイス兼用の代表としてノミック、ドライ専用アックスの代表としてクルコノギのアンカー4を例にレポートをお送りします。

ドライツーリングにおけるアックス

ドライツーリングでは岩やホールドなどの硬い素材のホールドに先端を引っ掛けて登ります。特に人工壁ではホールドにピックの先端がはまる穴や溝が刻まれていることがほとんどで、そこに引っ掛けて登る形になります。

このためドライツーリング用のピックは先端がくちばしのような形状をしているものがほとんどです。またピンポイントで真下に荷重をかけられるような角度にセットしてあります。

またドライツーリングでは安定してフックできる場所が限られるため、アックスをフックしたまま持ち替えたり、アックスの持つ位置を調整して距離を出したりします。

ドライ専用のアックスでは持つ位置を調整するためにロング、ミドル、ショートと3段階の長さで持てるアックスが主流になっています。

アイス寄りアックスとドライ専用アックスの具体的な違い

ピックの角度

上がアンカー4下がノミックのドライピック(ピュアドライではない)です。
一目瞭然で角度が違うのがわかると思います。

シャフトの角度

紫がアンカー4手前の透けているのがノミックです。
こちらも写真で見ると曲がり角がかなり違うのがわかると思います。最新のアンカー4では差が少なくなりましたが、一世代前のアックスであるタバロフなどでは逆U字では?と思うほどシャフトが曲がっているものもありました。

ハンドルのサイズ

左アンカー4右ノミックです。
ドライ専用アックスではハンドル部分だけでも持ち替えができる長さが確保されています。また2段めを持った時に小指球筋あたりがハンドルに乗る設計のものが多く、F4やF9での体重分散が図られています。

セッターは落としに来る

ルートを攻略するとき、コンペなどの人工壁はもちろん岩の神様が設定した外岩ルートでも核心部分をいかに通過するかがポイントになります。

具体的には強傾斜でのアンダーや浮きアンダー、遠いホールドを取りに行く場合、浅いメタルや岩などのピックが外れやすいホールドなど内容はいろいろなのですが、それぞれに強いアックスがありそれに対する弱点が出てきます

強傾斜でのアンダーや浮きアンダーに強いタイプ

ピック及びシャフトの角度

角度が急な方がアックス本体が壁に近づき傾斜を殺すことができます。アックスが壁に近づけば、傾斜を殺せるのはもちろん上にも伸びやすくなります

逆にピックの先端が下を向くために通常使用での距離は伸びなくなり、打ち込みにも弱くなるのでそのあたりはルートとの相性が出る部分でしょう。

トサカの大きさ

ピックの角度を変えなくてもトサカを大きくするとヘッドを聞かせたアンダーの傾斜は殺すことができます。この場合はピックの角度も変わらないので打ち込みにも大きな影響は出ません。

しかしトサカが効かない浮きアンダーでは効果はなく、トサカが立派になるぶん重さも増えてしまいます。

外れやすいメタル(岩)ホールドに強いタイプ

ピック先端の方向

ピックの角度も絡んできますが、体重をかけたときにピック先端が真下に向くくらいの角度が間違いなく外れにくいです。またガバホールドでも手前に引いても外れにくくなるなどの効果があります。

しかしピックの先端が完全に下を向いてしまうと打ち込みが全くできなくなってしまいます。またアンダーで書いたのと同様に距離も出なくなります。

ピックの鋭利さ

キンキンに尖っている方が引っかかります。特に樹脂や天然石でできたホールドは表面に多かれ少なかれ凹凸があるのでそれに引っかかってくれることが多いです。

しかし尖りすぎているとホールドの表面の凹凸に過剰に反応してしまい、本来フックするべき部分とは違う部分でも引っかかってしまうことがあります。このため「先端をほんの少し丸める場合もある」のですが、このあたりは好みでしょうか。。。

左からアイスピック、ドライピック改、ドライピック新品、クルコノギのドライツーリング用ピック。全てノミック用。

ドライツーリングではアイスピックのように2山目が先端のすぐ後ろにあると2山目がホールドにあたって先端が浮いてしまうことがあります。先端部分が確実に岩やホールドを捉えられるように、ドライツーリング用のピックは先端から2山目までの距離を長くとっています。

遠い1手に手がとどきやすいタイプ

ピックおよびシャフトの角度

ここまではピックやシャフトの角度が急な方が有利なパターンでしたがこれは正反対になります。角度のないピックや真っ直ぐなシャフトのほうがグリップとの距離を稼ぐことができるので結果として距離が伸びます。

ただし上で書いたような強傾斜でのアンダーや外れやすいホールドには弱くなっていくのでこのバランスをどこで取るかが悩ましいところです。

シャフトの長さ

単純にアックスの長さが伸びればその分リーチが伸びたのと同じになります。しかしアックスが伸びるとその分重くなる上に重心も手から離れます。コントロールが難しくなったり、地味に筋力を消費して20手30手進んだときに疲労してしまうかもしれません。

また体を切り返さなければいけないような場面では長いシャフトが手にあまる場合もあります。ただショート持ちをすればなんとかなることも多いのでシャフトの長さに関しては悩んだら長めをチャレンジする人が多い気がします。

ちなみにドライツーリングの競技にはUIAAのレギュレーションがありアックスはトサカなどの付属品も含めて内側50cm×25cmの箱に入るサイズである必要があります。

左アンカー2 中タバロフ 右ノミック
ドライツーリング専用のアンカー2やタバロフはBoxギリギリのサイズで作られているのがわかります。

アックス選びは方法論でしかない

ここで色々と書きましたが、アックスは登るための方法論でしかありません。核心を越えられないとき、アックスに解決を求めるのが筋力UPで解決するのか技術で解決するのか・・・

筋力は体重が微増する以外にデメリットは少なく技術に関してはハマる場面ならば無類の効果を発揮してくれます。

「DryTooling」ですから道具に拘るのはもちろん大事です。でも道具にはメリットとデメリットが有り、自分の体にも各個人の特徴があります。

自分の体格と筋力などを総合的に考えて足りない部分を補ってくれるアックスを選ぶと登れるようになるので、自分にとって何が必要かをよく考えて、変わるべきは自分なのか道具なのか、アックスなら買うのか改造するのか、ピックだけ交換してみるのかなど自分の持っている選択肢を一度全部広げた上でどうするか決めると幸せになれる気がします。