2023年6月17日に長野県上田市にあるクライミングジム「ねこねこウォール」内に併設されているドライツーリング専用エリア「たらこウォール」にて、ドライツーリングコンペ「たらこチャレンジコンペ」が開催された。
背景
今回のチャレンジコンペはIWC女子選手のトレーニングも踏まえたイベントであり、課題の難易度もIWCの女子予選課題を想定しているとのこと。希望者は男子でも参加は可能だった。
基本のルール
・コンペはフルートブーツ着用の蹴り込みありで擬似クリップはなし。
・参加者はトライ方法をオンサイトかフラッシュかを選択可能。
順番はクジ引きを行い、その後オンサイト組→フラッシュ組の順番で登る。
・予選課題は3本、各制限時間3〜4分。
・予選の成績(ポイント)により「にわとり」「ひよこ」のクラスに分かれ、全員が決勝に進出。
・決勝は1本、制限時間5分。
スタート順 | オンサイト組 |
1 | 上原久美子 |
2 | 佐々木健人 |
3 | 市川倫子 |
4 | 原顕子 |
5 | 原山直子 |
6 | 笹川淳子(銀嶺会) |
スタート順 | フラッシュ組 |
7 | 武野雅樹 |
8 | 澤口佳代 |
9 | 谷口久志 |
10 | 尾崎悟史 |
11 | 田名網宣茂 |
12 | 阿由葉真穂 |
13 | 川越賢二 |
予選から甘くない?!試される課題の数々
3本の予選課題は垂壁と傾斜壁、そして135度の強傾斜壁にそれぞれ用意されており、手数は12〜16手のセット。
予選課題1 垂壁 完登者:0/13
運動強度は低いが、バランス感覚や繊細なピックコントロールが試される課題。
ゴール取りにはコツがいるらしく、結局完登者は誰も現れなかった。
予選課題2 傾斜壁 完登者:5/13
傾斜壁の中で引き付けムーブやガストンムーブで取らせる想定が多く、フィジカルと体力が必要な課題。
予選課題3 135度 強傾斜壁 完登者:1/13
フィジカル要素に加えてフィギュア4等のテクニカルなムーブを多用させる課題。見えない位置にセットされたホールドのフッキングポイントをしっかりとらえられるかが最初の核心。
予選結果
予選の結果クラス分けは下記の通りになった。
「にわとり」クラスには女子IWCの選手が全員進出。
それに加えて田名網宣茂、尾崎悟史、佐々木健人も進出。
順位 | 「にわとり」決勝出場者 |
1位 | 上原久美子 |
2位 | 市川倫子 |
3位 | 田名網宣茂 |
4位 | 笹川淳子(銀嶺会) |
5位 | 佐々木健人 |
6位 | 尾崎悟史 |
7位 | 阿由葉真穂 |
順位 | 「ひよこ」決勝出場者 |
8位 | 武野雅樹 |
9位 | 谷口久志 |
10位 | 澤口佳代 |
11位 | 川越賢二 |
12位 | 原顕子 |
12位 | 原山直子 |
決勝課題
「ひよこ」決勝
垂壁から始まり傾斜壁、強傾斜壁へと移動していく合計19手の課題。壁から壁への乗り移りやシビアなピックコントロールが要求されるメタルホールドなどもあり、「ひよこ」とはいえ甘くない課題であった。
「ひよこ」決勝結果
「ひよこ」決勝は原顕子が優勝。継続的にドライツーリングのトレーニングに励んでいたとのことで、日々の練習が実った結果であった。
順位 | 「ひよこ」決勝結果 |
1位 | 原顕子 |
2位 | 武野雅樹 |
3位 | 澤口佳代 |
4位 | 谷口久志 |
5位 | 川越賢二 |
6位 | 原山直子 |
「にわとり」決勝
「ひよこ」と同様で垂壁→傾斜壁→強傾斜壁へと進む合計20手の課題。
序盤から繊細なポジションやピックコントロールが要求されるムーブが続く為、4手目まで4人の選手が脱落する結果になった。
もはや当たり前?!ホールドやボテを保持するボルダームーブ
「にわとり」の決勝課題では近年IWCでも見られるホールドを手で保持させるムーブがあった。
「にわとり」決勝結果
「にわとり」決勝は途中ピックが曲がるアクシデントに見舞われながらも終始安定的な登りを見せた田名網宣茂が優勝。また惜しくも僅差で2位だった上原久美子もIWC選手としての実力を見せつけた。
順位 | 「にわとり」決勝結果 |
1位 | 田名網宣茂 |
2位 | 上原久美子 |
3位 | 佐々木健人 |
4位 | 市川倫子 |
4位 | 笹川淳子(銀嶺会) |
5位 | 阿由葉真穂 |
6位 | 尾崎悟史 |
レベルが上がってきた日本のドライツーリング業界
ここ数年でドライツーリングの練習ができる環境が増えてきたこともあり、数年前までは必殺技のような扱いであったフィギュア4や浮きアンダーと呼ばれるテクニカルなムーブをどの選手も躊躇なく繰り出せるようになっており、業界全体のレベルが上がってきていると感じた。
今回のチャレンジコンペはIWC女子の予選課題を想定していた為、用意された課題は決して甘くはなかったが、難しいセットの中でも参加した全ての選手に見せ場があったコンペであった。
あとがき
「にわとり」も「ひよこ」も決勝課題は誰一人完登者を出さずに終わってしまった。たらこウォールでは、今回のチャレンジコンペで使用された課題をしばらく残しておくそうなので、コンペに参加した選手も今回参加できなかった方もぜひ完登を目指してチャレンジしてもらいたい。