Kwon’s drytooling academy in Japan【ドライツーリング講習会参加レポート】

2018年10月6日(土)~2018年10月8日(月)の3日間、アイスクライミング先進国である韓国のトップ選手、Kwon Young Hyeさんが来日し、Zig’s Rockドライツーリングウォール(長野県上田市)にて、本邦初と思われる本格的に体系化されたカリキュラムのドライツーリング講習が開催されました。

今回参加した受講生は、日本人13名。ワールドカップを志す選手からドライツーリングをはじめて間もないビギナーまで、レベルや目標に各々ばらつきはありますが、熱意さえあれば参加資格は不問。共通の受講項目の中でも、各自の力量に応じた柔軟な課題が設定され、参加者全員が着実にステップアップできる内容に仕上がっていると感じました。

練習は1日5時間。3日間で15時間となります。

初日はアックスの研ぎ方等、ギアのメンテナンス方法の説明からはじまり、その後に基本的なアックスの操作方法の説明を受けます。アックスの持ち方、くわえ方等、一見当たり前と思われるような動作一つ一つの理屈を解きながら、改めて基礎の大切さを学べます。

その後、ようやく練習開始となりますが、最初のうちはムーブがほとんど発生せず、非常に地味なロックオフ(引きつけ)の反復練習を行います。

引きつけロックオフ反復練習
引きつけロックオフ反復練習

アックスを引きつける動作は、やはりドライツーリングの超基礎であり、この動作のクオリティを上げることの重要性を思い知ります。

その後、アックスマッチ、ヤンガー(横向きにアックスをかける)等を少しずつ交えながら、ムーブ練習に移行します。とは言え、やはり最初はひたすら地味な動きの繰り返しで、しっかり引きつけて、不安定なホールドを保持しつつ、体重移動…の繰り返しになります。この練習では、上級者はより速いスピードが求められます。油断すると、アックスが外れてしまうようなホールドの位置や向きが絶妙な設定になっています。

初日の最後は、傾斜壁で浮きアンダーの練習です。左右それぞれ2本ずつ連続で取るのが1セットで、それを3セットくらい行い、最後はよれよれになります。

2日目も最初の90分はひたすら1日目と同じ動きを反復練習します。上級者は、負荷を加えるためにフィギュア4等の動作が追加で組み込まれ、各々のレベルにあった調整がこまめに行われます。

フルートブーツのメンテナンス方法レクチャー
フルートブーツのメンテナンス方法レクチャー

その後、ようやくフルートブーツを用いた練習に移行します。冒頭にフロントポイントのレクチャーがあり、垂壁と傾斜壁に応じたキックの使い分けの説明があります。

ポイントとしては、傾斜の強い壁ではしっかり足を安定させるため強くキックすること、逆に垂壁では無駄なエネルギーを消費しないように軽めにキックすること。さらにリズミカルなキックを意識することでした。

その後、フルートブーツを使ったムーブ練習に移行するのですが、傾斜の強い壁では強く蹴り込まないと爪が刺さらず、クライミングシューズよりも難しく感じます。昨日練習した引きつけ、アックスマッチ、ヤンガー、浮きアンダー等の要素もすべて出てきます。

最後にフィギュア4練習になります。アックス2本をマッチ、アックス1本を両手マッチ、アックス1本をヤンガーで両手マッチという3パターンのスタート方法があり、それぞれフィギュア4状態のままダウンする動きも加え、1往復を数セット繰り返します。2日目も終了時点でよれよれ状態でした。

3日目もやはり最初の90分はロックオフの反復練習です。その後、フルートブーツを使ったキック練習。最後に今まで練習してきた要素が詰め込まれた長もの課題をやります。さらに腹筋トレーニングとアックス懸垂を挟んで、すべての力を出し切るというハードな練習内容です。一番最後にデュエル方式のフィギュア4ぶら下がり。

そして、ようやく3日間の練習が終了です。

講習生一人一人にアカデミー受講修了の証明が手渡されます。

今回のアカデミーを通じて、改めて引きつけ、ロックオフをはじめとする基礎の重要性を学べました。

この動きを確実に習得することが上達の近道なのではないかと思います。

kwon先生による指導の様子
kwon先生による指導の様子

Kwon選手はアイスクライミングワールドカップで活躍しているのはもちろん、岩場の開拓やドライツーリングの講習会をアジア各地で展開しています。

世界的な選手に指導してもらえる機会は滅多にないため、今後もKwon選手のイベント開催に注目です。