中島正人率いるTMGCドライツーリング普及委員会が主催するドライツーリングトライアル・シリーズコンペ”秋の三連戦”が開幕した。
スピードに特化したコンペ
第一戦となる今回はスピードをテーマにしており、完登しやすい簡単な課題をいかに速く登れるかという一点で勝敗が決まる。
戦いの舞台は、ice point 青梅。アイスアックスとフルートブーツを着用して競技が行われた。
特別ルール
課題は合計3つ。それぞれの課題で早く完登した順に順位が付けられる。その順位ごとにポイントが振り分けられ、最終的に3課題の総計ポイントが高い順に最終順位が付けられる。
最初の2ルートはくじ引きでトライする順番が決められるが、事前に2回までの試登が許されている。そして3回目のフラッシュトライで完登までにかかった時間を競う形式だ。
ただし、1分経過したタイミングで即終了となり、その場合はそこまでのホールド数をカウントする。
3つ目のルートは、これまでの2ルートの合計ポイントが低い順にトライする。試登はできず、オンサイトトライとなるため、一発勝負の緊張感が存分に味わえる。
また、課題の難易度もやや高めに設定されており、制限時間は2分となる。
コンペ内容
ルート1〜魅せるクロスムーブ〜
距離の近いホールドをひたすら効率よく繋いでいく13手の課題だ。難所はなく、純粋なスピード勝負となった。2回の試登で最適なムーブを構築していく適応力も試される。
終盤に連続するアンダーホールドをいかに無駄なく処理するかが勝負の分かれ目となった。
このアンダーホールドを大胆にリスキーなクロスムーブを用いて突破した内山紀貴が30.64秒で1位。次いで、安定感のある高速ムーブを繰り出した橋本翼が僅か0.1秒差で2位となった。
その他5名の選手が30秒台のタイムを記録しており、接戦となる勝負が繰り広げられた。
ルート1の上位5選手
順位 | 選手 | タイム |
1 | 内山 紀貴 | 30秒64 |
2 | 橋本 翼 | 30秒79 |
3 | 上原 久美子 | 32秒70 |
4 | 嶋田 豊 | 33秒03 |
5 | 宮崎 正章 | 34秒16 |
ルート2〜ダークホース現る〜
90度壁から120度壁へ繋ぐ13手の課題だ。ルート1に比べると、処理に手間のかかるホールドが少ないため、よりハイスピードでトライする選手が目立っていた。
そんななか、1位突破はやはり橋本翼だ。圧倒的な高速ムーブを繰り出し、25.38秒の記録を叩き出した。
次いで熾烈な2位争いを制したのは、伏兵・佐々木健人。2回の試登を経て覚醒した魂の登攀で、3位の嶋田豊を僅差で抜いた。
アイスクライミングワールドカップの出場経験者や歴代モンチュラカップの覇者たちが優勝候補と目されるなか、下馬評を覆す会心のパフォーマンスを見せた佐々木健人がギャラリーを沸かせた。
ルート2の上位5選手
順位 | 選手 | タイム |
1 | 橋本 翼 | 25秒38 |
2 | 佐々木 健人 | 27秒93 |
3 | 嶋田 豊 | 27秒96 |
4 | 内山 紀貴 | 31秒14 |
5 | 宮崎 正章 | 31秒89 |
ルート3〜スピードを制すパワー〜
オンサイト形式の最終課題は23手。ほとんどガバホールドで構成されているが、これまでの課題よりホールドの距離感が長くなり、処理しづらいルーフ面にもホールドが設置された。最後に待ち構える吊るされたキューブを渡りゴールとなるが、制限時間2分はなかなかシビアで完登者は僅か3名。
1位は嶋田豊の1分29秒93、次いで僅差となる1分30秒71の橋本翼が2位。パワー系ムーブを得意とする2名の実力者が手堅いパフォーマンスを見せた。さらに上原久美子が1分57秒34で堂々3位。小柄な女子選手として圧巻のスピード登攀となった。
最終的にはアイスクライミングワールドカップ出場経験者たちが違いを見せる結果となった。
ルート3の上位5選手
順位 | 選手 | タイム |
1 | 嶋田 豊 | 1分29秒93 |
2 | 橋本 翼 | 1分30秒71 |
3 | 上原 久美子 | 1分57秒34 |
4 | 森田 啓太 | 記録なし(21手+) |
5 | 佐々木 健人 | 記録なし(21手) |
リザルト
男子表彰台
男子トータル順位は全課題で安定したパフォーマンスを発揮した橋本翼が優勝。最終課題を制した嶋田豊が準優勝。3位以下は混戦を抜けた内山紀貴が躍り出た。第一課題でのチャレンジが功を奏した。
順位 | 選手 | 総計ポイント |
1位 | 橋本 翼 | 260 |
2位 | 嶋田 豊 | 220 |
3位 | 内山 紀貴 | 195 |
女子表彰台
総合順位でも6位につけた上原久美子が女子優勝。圧倒的なスピードを見せた。準優勝は成長著しい阿由葉真穂。僅差のスコアで原山直子が3位となった。
順位 | 選手 | 総計ポイント |
1位 | 上原 久美子 | 170 |
2位 | 阿由葉 真穂 | 99 |
3位 | 原山 直子 | 96 |
総括
いよいよ開幕したドライツーリングトライアル・シリーズコンペ。第一戦はテーマ通り愚直にスピードに特化した課題が展開された。
速さを競うなかに、決して運要素はない。日頃のトレーニングでより1秒にこだわれるかがスピード勝負の明暗を分ける鍵となるだろう。
次戦は来月、テーマは持久力。
戦いはまだまだ続く!
※本記事の写真提供 @a.y.u.hearn 様 Instagram / Twitter