ついに今シーズン初、「ワールド」の名がつく大会が始まった。
舞台はスイスのザースフェー。
会場は立体駐車場の一部を利用したアイスドームでアツイ登攀がくりひろげられた。
開催期間は2022年1月26日-29日の3日間となった。
日本からは前の週のメンバーに加えて、モンチュラアスリートの中島正人選手が加わり、計7名が参戦!
セミファイナル以降の熱き戦いの様子はyoutubeのアーカイブをチェック!
リード種目セミファイナルの様子
ユースのファイナルとシニアの女子が交互に映り、途中からシニアの女子とシニアの男子が交互に映される映像となっている。
スピード種目ファイナルの様子
ユース→シニアの女子→シニアの男子の順に映される。
1人3トライで一番早かったタイムが記録となる。
リード種目ファイナルの様子
日本人選手リザルト
男子リード
順位 | 名前 |
---|---|
13位 | 門田ギハード |
30位 | 中島正人 |
42位 | 伊藤権次 |
男子スピード
順位 | 名前 |
---|---|
20位 | 中島正人 |
男子リード
男子リード種目で門田ギハード選手が予選を11位で通過!
セミファイナルで13位につける健闘を見せてくれた。
セミファイナルでは6クリップした後に出てくるホールドの処理が非常に難しく、多くの選手が難儀していた。
予選1位(同着5名)通過のMalshchukov Vadim選手も同じところでフォールしており、相当な実力者であっても突破は難しいところだったことが伺える。
中島正人選手は予選でルート1が7クリップ、ルート2が12クリップで30位となった。伊藤権次選手はルート1が5クリップ、ルート2が12クリップで42位という結果に。
予選突破のラインとしてはルート1が11クリップ、ルート2が14クリップできていれば突破が見えていたと思われる。
男子スピード
男子スピード種目は中島正人選手が孤軍奮闘。20位につけた。
19-20シーズンのワールドカップで、同じスイスの壁で26位だったところから少し順位を上げる結果となった。
女子リード
順位 | 名前 |
---|---|
7位 | 竹内春子 |
21位 | 上原久美子 |
26位 | 笹川淳子 |
26位 | 八木名恵 |
女子スピード
順位 | 名前 |
---|---|
15位 | 上原久美子 |
16位 | 竹内春子 |
19位 | 笹川淳子 |
女子リード
リード種目、竹内春子選手がファイナリスト入りを果たした。
強豪揃いの状況のなか堂々の7位となったのは流石といえよう。
予選を14位で抜け、セミファイナルを8位で通過し順位をあげてきた。
決勝のトライだが、13クリップで競技終了…6位か?と思いきや7クリップしたところで、ボテの穴にフッキングしてしまい、そこで競技終了の判定となっていた。
詳細はyoutubeのアーカイブを確認して欲しい。
21位となったのは上原久美子選手。ルート1が2クリップ、ルート2が12クリップ。笹川淳子選手とプロアイスクライマー八木名恵選手はともにルート1が2クリップ、ルート2が11クリップというリザルトになった。
3選手ともルート1の下部でセッターの罠にかかってしまったのだろうか。
後にジャッジミスがあったことが笹川選手のSNSで判明するが、そのことをグッと飲み込みさらなる高みを目指す彼女だった。
女子スピード
スピード種目は上原久美子選手と竹内春子選手がファイナルへ進出し、その後の決勝で15位と16位で1秒強の僅差であった。
笹川淳子選手は2本ともフォールしてしまい記録なしとなった。
コンペの魔物 in Saas-Fee
コンペでは番狂わせはままあることだ。
日本のドライツーリングコンペに参加する者達の間ではそれを「コンペの魔物」と呼び認識している。
そして、今回もそれはおこってしまった…。
まずは一人目、Glatthard Yannick選手。ファイナル常連選手で、日本ではヤニックジャンプの人として知られている。
予選課題の1つ目はさすがの記録だったが、2課題目の核心部で大苦戦。ほかの選手と高度で大きく差が出てしまい、まさかのまさかの予選敗退となってしまった。
二人目はTolokonina Maria選手。こちらも優勝候補筆頭の選手だ。
序盤に出てくるアイスバレルへの飛び移りに失敗しまさかのフォール。セミファイナル16位となり競技終了となった。ロワーダウン後、へたりこみ顔を手で覆うシーンを見てこちらも胸が苦しくなった。
三人目はvan der Steen Marianne選手。18-19シーズンのourayのエリートミックスコンペで優勝を飾る実力者で、レギンスがトレードマークの選手だ。
決勝の3ホールド目でフッキング禁止部分を使って身体を上げたためアウトの判定。13クリップまで手を進め、降りてきたあと憤慨している様子だったのはその事実を途中で知らされたからだろう。
コンペはいつも何が起こるかわからない。
だがこれらの出来事も知っておけばどこかで対抗策になるかもしれない。
事例として、覚えておきたい。
決勝課題と表彰台リザルト
ここからは決勝課題と表彰台に絡む結果についてみていく。
男子決勝ルート概要
アイスブロックからのスタート、メタルとストーンホールドをつないで1クリップのあと大きな一手を出す。予選同率1位のLoshchenko Ivan選手はここでまさかの墜落。2-7クリップにかけて右上し、その後アイスバレルへダイノを決める。8クリップをはさみもう一度アイスバレルへダイノ。これが遠い…。ここでKempney Tyler選手とKuzovlev Nikolai選手が姿を消すことに。Bosshard Benjamin選手など上位陣はここを冷静に対処。そこから直上し、ドームのてっぺんへ至る。てっぺんのボテからアイスバレルへのロングリーチを出し、最後は看板を登りフィニッシュとなる。
リード種目男子
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | Ladevant Louna | FRA |
2位 | Bosshard Benjamin | SUI |
3位 | Ladevant Tristan | FRA |
Ladevantブラザーズが表彰台に揃う結果になった。
Ladevant Louna選手は先週のマルブンに続き安定の1位。
兄であるLadevant Tristan選手がセミファイナル5位から順位をあげて3位に浮上した。Benjamin Bosshard選手も6位から2位へと躍進した。19歳、次世代のエースとなるか。
女子決勝ルート概要
アイスブロックからスタートし、次のメタルをとるのがちょっとつらい位置にいある。ここをこえ、ファーストクリップしたところでアイスバレルの上に乗って遠い一手を出す。直上し6クリップしてから右へトラバース。7クリップしたところでボテをつかみ、体制を整えてダイノを決める。トラバースは続き、アイスバレルを二つ繋いでその次のボテを経由、もう一手メタルに手を伸ばしてようやくトラバース終了となる。ここの地点で12クリップとなるが、この次のボテに付くメタルをとるところで明暗が分かれた。上からかけると外れやすくなっておりVon Allmen Laura選手とBertling Enni選手など5位以下の選手がフォールとなった。正解は横だったらしく、それをとったあと、しっかりとサイド引きを効かせたまま次のホールドをアンダーでとるハードムーブとなる。核心を超えたあとは直上していき、アイスブロックを経由しアイスドームの頂上へ至る。フィニッシュは男子同様看板をのぼり完登となる。
リード種目女子
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | Klingler Petra | SUI |
2位 | ASTAKHOVA ANASTASIIA | RMF |
3位 | Schönbächler Franziska | SUI |
首位は東京オリンピックでも活躍したKlingler Petra選手が唯一トップアウト。中継ではカメラがトップホールドまで追えずフレームアウト。
2位はASTAKHOVA ANASTASIIA選手。セミファイナル7位からの逆転劇となった。20-21シーズンのワールドカップランキングでは5位の強者だ。
Schönbächler Franziska選手は16クリップを飛ばして登ったところから戻りクリップをする動きを見せ3位に。飛ばさずに進んでいれば一つ上の段だったかもしれない。
超速バトル 6秒台を見逃すな!
氷壁の短距離走と呼べるスピード種目の結果は以下となった。
スピード種目男子
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | Beheshti Rad Mohsen | IRI |
2位 | Glazyrin Nikita | RMF |
3位 | Bikulov Danila | RMF |
アイスブロックの横を使って登る選手も印象的だったが、何と言ってもイランのBeheshti Rad Mohsen選手の最終登攀が圧巻だった。この選手はスピード専門で以前から出場しているのを見てきた。6秒台が出た時にチームメイトのSafdarian Mohammadreza選手とハグをし、喜び合っていたのが印象的だった。ついにロシア1強の状況を崩したぞと言わんばかりだった。
スピード種目女子
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | SAVITSKAIA NATALIA | RMF |
2位 | Filateva Iuliia | RMF |
3位 | Tolokonina Maria | RMF |
予選では8秒台を叩き出していたTolokonina Maria選手だが、決勝では速度が乗らず11秒台となり3位となった。予選での記録が決勝でていたらぶっちぎりで優勝だっただろう。最終的に20-21シーズンの覇者SAVITSKAIA NATALIA選手が首位に輝いた。
※ロシアの選手はオリンピックと同様の理由(ドーピング問題)により「RUS」の表記ではなく、ロシア山岳連盟(RMF)となっている
To Be Contenued …
実は優勝候補の一角である選手がコロナ陽性で欠場となるなどのハプニングがあった。もし予定通り出場していたらさらに接戦が繰り広げられていたのではないだろうか。とはいえ実に見応えのある世界選手権だったと感じる。
次はアメリカ大陸ourayにて北アメリカ選手権に挑戦する日本人選手を応援していく。
ちなみに会場となったアイスドームには、歴代の優勝者が種目別に掲載されるパネルがある。いつかここにJPNの文字が刻まれることを願う。