2022年1月23日、リヒテンシュタイン公国のマルブンにて、ヨーロピアンカップ第5戦が行われた。
男子35名、女子22名、総勢57名の規模の大会となった。
日本人選手は6名(男子2名、女子4名)が参戦。残念ながら全員が予選敗退という結果となってしまった。
ロシアと韓国の強豪国選手は参加していなかったが、欧州勢の選手層の厚さを感じる大会となった。
日本人選手の結果は以下の通り
女子
名前 | 順位 |
---|---|
竹内春子 | 12位 |
笹川淳子 | 15位 |
上原久美子 | 16位 |
八木名恵 | 17位 |
男子
名前 | 順位 |
---|---|
門田ギハード | 13位 |
伊藤権次 | 26位 |
決勝の模様はUIAA公式youtubeチャンネルにアーカイブがあるので是非チェックして欲しい。
アイスタワーでの戦い
舞台となったマルブンの壁は氷のタワーの脇にドライセクションが設けられており、さらにそこに寄りかかるように強い傾斜の壁が設定された構造となっていた。
高さは氷のタワー部分がおよそ20m、脇のドライセクションがおよそ15m、寄りかかる強傾斜壁がおよそ13mといったところだろうか。
日本との時差は8時間で、日本で20時だとすると、現地では正午となる。
タイムスケジュールは以下のように進行し、一日で決勝まで行うというハードスケジュールとなっていた。
- 9時~11時 女子予選
- 12時~15時 男子予選
- 18時~19時 女子決勝
- 20時~21時 男子決勝
スコアから判断する予選
男女とも予選は3課題目が優しめの設定だったのか、完登もしくはそれに近い高度まで到達した選手が多数を占めており、1課題目2課題目で如何に登りきれたかが決勝進出のカギとなったようだ。
女子1課題目は12クリップしたところで多くの選手がフォールしていたようで、日本人選手もここで苦戦を強いられたのだろう。
2課題目は10クリップに到達しない選手が多数を占める辛めの設定だったことが伺える。
男子1課題目は完登が7名となったため、1課題目と3課題目が完登であることが決勝進出の絶対条件という感じになり、勝ち抜くにはかなり狭き門となったと思われる。
女子決勝
初手からの数手、スイス製ストーンホールドが配置されており、緊張を強いられる。
ファーストクリップを済ませ強傾斜へ入るところから、浮きアンダーを使った遠い一手を出すところがパワーを削られるところだろう。
その後数手は高度を稼ぐチャンスとなるところで、ここまで来た選手はまず落ちることなく突破している。
8クリップ9クリップのあたりでマグロが登場しここの対処に難儀することになる。ここを突破すると少しトラバースした後にアイスセクションとなる。
しっかりとアイスクライミングをやることでトップアウトとなる。
結果、表彰台はスイス勢が独占となった。
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1位 | Goetz Sina | SUI |
2位 | Klingler Petra | SUI |
3位 | Labarile Vivien | SUI |
1位のGoetz Sina選手はヨーロピアンカップ第4戦に続き優勝となった。19-20シーズンのヨーロピアンカップでも1位の成績を残しており、かなりの強者だ。
2位のKlingler Petra選手は東京オリンピックのスポーツクライミング種目にも出場していた選手。アイスツールを使っても強いのがうらやましいかぎりだ。
3位のLabarile Vivien選手は19-20シーズンのワールドカップではピンク色のフルートブーツが印象的だった選手。今シーズンは通常のレベルアイスになっているようだ。この選手も決勝常連の選手だ。
男子決勝
いきなりのアンダーでスタート。
スイス製ストーンホールドをいくつか拾ったあと、カンテを使うような位置にあるホールドがなかなか曲者で、落としにくる設定となっていた。
4クリップしてから早くもまぐろが登場し、不安定なところからの遠い一手を出していくのだが、トップ選手はさすがの突破力を発揮していた。
10クリップしたところで一旦トラバースしていくのだが、ここでのムーブが後の順位に影響が出たように思う。
先を急いでホールドを飛ばすか、いったんクライムダウンして細かいホールドを拾うのか選択肢があえて与えられているようだった。
そして12クリップしたところでダブルダイノでキューブに飛び移る。会場がわくポイントだ。
その後は細長いまぐろを登りフィニッシュとなる。
男子はフランスとスイスの2強となった。
順位 | 名前 | 国名 |
---|---|---|
1位 | Ladevant Louna | FRA |
2位 | Primerov Nikolay | SUI |
3位 | Brown Jonathan Arthur | SUI |
首位のLadevant Louna選手、完登したかに見えたが、記録としては16クリップとなった。兄であるLadevant Tristan選手( 6位 )と兄弟そろって強い。
2位Primerov Nikolay選手はワールドカップでも上位にくる選手で、今シーズンのヨーロピアンカップではBERNで首位、BRNOで2位と好成績を出している。
3位のBrown Jonathan Arthur選手はユースで活躍していた若手選手で、ヨーロピアンカップでは常に上位にくる選手だ。
結びに
残念ながら日本人選手の活躍をライブ配信で見ることはかなわなかったが、遠くリヒテンシュタインまで移動し、国際大会に参加したということがとても価値のあることだったと思う。
翌週は立体駐車場の吹き抜けを利用した会場でお馴染みのスイスにてワールドチャンピオンシップスが行われる。
スイス勢力の勢いが益々強まることが予想される中、日本人選手がどのような活躍を見せてくれるか楽しみである。