2020年1月24日、25日、UIAAアイスクライミングワールドカップの最終戦が行われた。
戦いの舞台はスイス。会場はSaas Feeにある立体駐車場の螺旋状スロープの空洞部分だ。
日本との時差は8時間。日本で18時の場合、スイスでは同日の10時となる。
最終戦とあって、男女合わせて110人もの選手達が集まり、最多となった。
日本からは男性5名、女性2名が出場した。
セミファイナルとファイナルの模様はUIAAのYoutubeチャンネルから見ることが出来る。
リード種目ファイナルの様子
リード種目女子セミファイナルの様子
リード種目男子セミファイナルの様子
スピード種目ファイナルの様子
予選結果
日本アックス女子勢は小武芽生選手が唯一予選を突破!!
1課題目はトップアウトに迫る14クリップの高さまで進み、2課題目は見事にトップアウト。
予選10位通過と早くも上位常連に食い込む力を見せてきた。
竹内春子選手は予選2課題目の下部でまさかのフォール。24位となった。
スイスの会場は構造上、垂壁の部分がメインとなるため、下部からシビアなホールドが連続するのが特徴だ。
1課題目が13クリップまで進んでいたので、予選通過できるポテンシャルはあった。2クリップとなってしまったのが非常に悔やまれる。
男子は門田ギハード選手が見事に予選突破!
各国の強者達が集まった今大会で13位につけたのは大きな収穫となっただろう。
森田修弘選手は40位、中島正人選手は42位、伊藤権次選手は47位、橋本翼選手は51位であった。
男子予選、2課題目はほぼ半数の選手が完登する結果となった。
完登までいかなかった選手の結果をみると、8クリップあたりの記録が多く、ここが核心だったのだろう。
2クリップといった下部で落ちてしまった記録では、アテンプト2※がついている選手が多かったところから、やはり下部からスリッピーなホールドが出てきたと予想される。
※予選の場合、1クリップするまでの間にフォールした時は再トライが認められている
女子セミファイナル
最初の核心は8クリップし、アイスバレルに乗り移ってから次のアイスキューブにいくところ。
ルートの折り返し地点となるが、多くの選手がここにたどり着く頃にはかなりの時間が経っている状態だった。
予選1位通過の若手、Dubovtseva Irina選手も各種ホールドやアイスバレルの対処に苦慮。最初の核心までで多くの時間を使ってしまい、9クリップでタイムアップ。13位と大きく順位を落としてしまった。
二つ目の核心はスピードウォールの上部に立ち、アンダーを効かせたところからボテのホールドを取るというもの。
ロシアンロケットの異名を持つ、Bogdan Valeriia選手は思い切り良くランジを決めて突破。
身長的に不利なTolokonina Maria選手はあの手この手とムーブを試すも届かず、意を決してランジをすると、ホールドにアックスを残置してフォール…かと思いきや、スピードウォールの上に尻餅をついただけで済み、その後きっちりトップアウトしていった。
さすがの保持力
小武芽生選手は持ち前のフリークライミング力をいかし、下部のシビアなホールドを手で保持して突破していった。
核心を越えた時点で残り時間が1分程、そこから巻き返しを図るが、続くアイスセクションに阻まれ10クリップでタイムアップ、12位で競技を終えた。
アイスバレルの対処方法や、アックスの効率的な捌き方などまだまだ時間を短縮する余地があるように思える。
きっと次はより進化した姿を見せてくれるだろう。
男子セミファイナル
セミファイナルは非常にエキサイティングな課題だった。
核心となったのは、15クリップした後のアンダーからボテに付く遠いホールドへトラバースし、大きく振られるのを押さえてから、フィギュア4で思い切り身体を振って上部のホールドをとるという一連の動きだ。
多くの選手がここで手こずり、16クリップ以上できた選手は5人となった。
1手出すかどうかが分かれ目
日本の門田ギハード選手もこの核心部まで到達。15.221ポイントにつけ、他の同じところに達した選手より0.001ポイント上回った。
この強豪ひしめくスイスの舞台でファイナルに進出できる瀬戸際まできたが、その後トライしたKuzovlev Nikolai選手、Grebennikov Dmitriy選手も同ポイントとなり、カウントバックでファイナルの切符を逃すことになった。
非常に惜しい結果となったが、次に繋がる手応えを感じたことだろう。
ニューカマー登場
注目は予選を1位で通過したMalshchukov Vadim選手だ。
小武芽生選手と同様にフリークライミングをバックグラウンドに持つ、まだ10代の若い選手である。
開始直後からテンポよく登っていき、あれよあれよと核心もあっさりと突破し、驚きのパフォーマンスを見せた。唯一完登となり、セミファイナル1位で通過となった。
スピード種目でも2位という結果を出しており、今後が楽しみな選手だ。
ファイナル
決勝課題、男女ともボテを掴んで身体を上げて、アイスバレルにランジするというのが印象的な課題だ。決勝に相応しく、魅せる課題となっていた。
女子決勝
女子決勝2番手で登場したThomas Marion選手は手堅く登り、15クリップ。
その後に登場したBertling Enni選手、van der Steen Marianne選手と相次いでふい落ちとなった。
僅差の結果
今大会、予選から続く上位争いは終始3人の選手によって行なわれていた。
表彰台常連のSHIN WOONSEON選手、今期絶好調のGoetz Sina選手そして女帝Tolokonina Maria選手だ。
結果、僅か0.01ポイントの差で2人をおさえTolokonina Maria選手が優勝となった。唯一時間内に最終セクションに1手届いた。本当に僅差の戦いだった。
男子決勝
表彰台常連のPARK HEEYONG選手だったが、8クリップ後ランジを失敗し7位となった。
KIM MIN CHEOL選手やPrimerov Nikolay選手はまさかのふい落ち。
セミファイナルで魅せてくれたニューカマー、Malshchukov Vadim選手はランジした後スピードを上げて登っていこうとしたところ、ストーンホールドから落ちてしまい6位で競技を終えた。
ギリギリでセミファイナル通過となった、Kuzovlev Nikolai選手はきっちりと巻き返し準優勝となった。
勝負強さは流石といったところだろう。
優勝はフランスの若きエース、Ladevant Louna選手が唯一完登となった。
リザルト
女子
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1 | Tolokonina Maria | RUS |
2 | Goetz Sina | SUI |
3 | SHIN WOONSEON | KOR |
4 | Thomas Marion | FRA |
5 | Vlasova Ekaterina | RUS |
6 | Von Allmen Laura | SUI |
7 | van der Steen Marianne | NED |
8 | Bertling Enni | FIN |
男子
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1 | Ladevant Louna | FRA |
2 | Kuzovlev Nikolai | KOR |
3 | Grebennikov Dmitriy | RUS |
4 | KWON YOUNGHYE | KOR |
5 | Glatthard Yannick | SUI |
6 | Malshchukov Vadim | RUS |
7 | PARK HEEYONG | KOR |
8 | KIM MIN CHEOL | KOR |
スピード種目
決勝は16名で1人3登し、1番早いタイムが成果となる。
女子ではリヒテンシュタインのBeck Lea選手が8位入賞。
男子ではSafdarian Korouyeh Mohammadreza選手の3登目、ゴール手前で両手を使う面白い登り方をしていた。
結果としては今シーズンもロシア勢の表彰台独占となった。
Nemov Anton選手は今シーズン完封勝利。
女子
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1 | Dubovtseva Irina | RUS |
2 | Tolokonina Maria | RUS |
3 | Bogdan Valeriia | RUS |
男子
順位 | 名前 | 国 |
---|---|---|
1 | Nemov Anton | RUS |
2 | Malshchukov Vadim | RUS |
3 | Glazyrin Nikita | RUS |
登り方の違い
見ていると登り方に2パターンあることに気づく。
ひとつは素直に上から引っ掛けて登っていくスタイル。
もうひとつはサイドプルしながら登るスタイルだ。
ロシアの選手の多くは後者のスタイルで登る選手が多く、安定していいタイムを出していた。
ただ、チャンピオンのNemov Anton選手は前者のスタイルで常に上位にいることから、必ずしもサイドプルが正解というわけではなさそうだ。
日本人選手の結果
男子
名前 | 順位 | 秒数 |
---|---|---|
橋本翼 | 24位 | 16.32 |
中島正人 | 26位 | 16.50 |
予選は2本登ってどちらか速いタイムが記録となる。
予選通過ラインとしては13秒台が必要なようだ。
ちなみに、ロシアのトップ選手達は7秒台8秒台という状況だ。
今シーズンのアイスクライミングワールドカップはこれで終了となる。
総合成績などまとめ記事を別途展開する予定だ。
また、アジアカップ、ヨーロピアンカップ、ユースチャンピオンシップなど、まだまだシーズンは続く。
国内でも各種イベントが開催されているので是非とも参加し盛り上げていってほしい。