日本女子選手の快進撃!!~UIAA アイスクライミングワールドカップ 2020 初戦中国~【W杯レポート】

2020年1月3日〜5日、アイスクライミングワールドカップの初戦が行われた。
舞台は中国の北東部に位置する学園都市、長春(チャンチュン)。
平らな土地に映える、アーチ状の構造体が目を引く会場だ。

リード種目が行われたウォール
スピード種目はバーチカルアイスで行われた

UIAAのyoutubeチャンネルからセミファイナルとファイナルの模様を見ることができる。

日本からは女子6名、男子5名と日本史上過去最多の参加人数となった。

リード種目ファイナルの様子

リード種目セミファイナルの様子

スピード種目ファナイルの様子

日本の出場選手

男子

氏名出場回数(シーズン)2019Overall
Lead/Speed
伊藤権次3回目45位/ 62位
橋本翼2回目42位/-
森田修弘初出場
中島正人4回目36位/52位
門田ギハード5回目19位/-

女子

氏名出場回数(シーズン)2019Overall
Lead/Speed
橋本久美子3回目32位/34位
笹川淳子初出場
市川倫子初出場
小武芽生初出場
大塚優希初出場
竹内春子2回目13位/15位

日本アックス女子旋風!?

予選は男女2課題ずつ登攀した。
日本の男子選手は予選から非常に苦戦を強いられた一方で、女子選手はなんと6人全員が高水準な結果を出し、初出場の選手が多いにも関わらず、全員でセミファイナルにコマを進める結果となった!
昨年、国内で行われた男女混合形式のコンペでも女子選手の活躍が光っていたが、今大会でもその強さを発揮することとなった。この段階では、小武選手と竹内選手がファイナリスト当確の順位につけていたことは衝撃的だ。

氏名予選1課題目予選2課題目予選順位
小武芽生11.26TOP7
竹内春子11.26TOP8
橋本久美子10.2311.2413
笹川淳子10.2211.22115
大塚優希10.22210.2116
市川倫子9.20210.21217

強豪揃いの狭き門

男子の課題は下部からいきなりトリッキーなムーブを要求された。

振り子のように身体を動かして次の手をとる

結果を見ると、およそ4分の1の選手が2課題ともトップアウトしていた。
ほとんどがいつものファイナル常連選手達で、大会数の少ない今回のワールドカップに強豪達が集った形となった。
そんななか門田ギハード選手が予選16位で通過し、何とかセミファイナルへの切符を手にした。

氏名予選1課題目予選2課題目予選順位
門田ギハード12.23210.2316
橋本翼9.1810.21124
中島正人9.1728.19225
伊藤権次3.110.2227
森田修弘9.175.1329

予選は陽が落ちても続いた
アーチ内はしっかりと照明がたかれる

セミファイナル

セミファイナルはたて続けに日本人選手が登攀。
配信では一時、メイン画面とワイプ画面に日本人選手が登る姿が映り、昨シーズンではなかった光景に感動を覚えた。

市川倫子選手→大塚優希選手→笹川淳子選手と続き、1人ロシアの選手を挟み橋本久美子選手の登りを配信で見ることができた。
男子3番手で登場した門田選手も上部の核心を越え粘りを見せてくれた。

セミファイナル前半に登場し、熱いトライを見せた日本人選手達の結果は、女子は橋本久美子選手11位、市川倫子選手15位、大塚優希選手17位、笹川淳子選手18位となった。
男子は門田ギハード選手が12位。
ここまで戦った選手達の健闘を讃えたい。

女子セミファイナルの課題

彼女は何を語ったのか

配信を見ていてワイプに映る笹川選手(銀嶺会)がカメラに何かを喋りかけているのを気になった方もおられるだろう。

本人に確認をとることができたので紹介しておこう。

この場所に来れてとても嬉しい、私の最初のワールドカップは終わってしまったが、自分にとってはとても大きな挑戦だった。また頑張ります。

登り終えてすぐにカメラを向けられ、何かを伝える姿に込み上げるものを感じた。
日々自己研鑽を積む選手達、努力を続ける選手達が発する言葉にはとても力があると感じるシーンだった。

新アックスの導入も目立つ大会

ところで、昨シーズンよりアックスを変更している選手も多い今大会。代表的なところでは、Tolokonina Maria選手がフォースカーボンからKrukonogi Anchorに変更し、PARK HEEYONG選手がノミック(改造モデル)をエルゴノミック(改造モデル)に変更している。日本選手では、橋本翼選手がフューエル(改造モデル)をフュージョンに変更している。また、笹川選手は、お気に入りのASPEEDを大会直前でOctaに変更している。ツールの変遷もまた、アイスクライミングワールドカップの見どころと言える。

セミファイナル後半の戦い

配信のトラブルでしばらく情報が途絶えたが、配信が再開されると、上位の常連選手達が登っていた。

王者陥落

続々と強豪選手がトップアウトしていく中、昨シーズンの王者Kuzovlev Nikolai選手がセミファイナルで姿を消すことになった。
12クリップ付近の核心部で時間をかなり使ってしまい、最終手前15クリップのところでタイムアップとなってしまった。

ファイナルに進んだ選手はことごとくトップアウトしており、ファイナルに進んだ選手の中で唯一完登ではなかったのはロシアのKurochkin Ilia選手であった。
Kuzovlev Nikolai選手とは僅か0.009ポイント差で滑り込む形になった。

Kurochkin Ilia選手だが、先日行われたサンクトペテルブルクの大会で3位の結果を残している若手選手だ。
世代交代の波が来ているのかもしれない。

竹内春子の続・快進撃!!

女子セミファイナルでは常連選手が順当にトップアウトしていく中、竹内春子選手が7位でファイナル進出。
女子は2010年にBUSTENI大会でTakahashi Megumi選手が6位という記録があった。
実に10年振りに女子で決勝に進む選手が登場したことになる。

セミファイナル課題を登る竹内選手

予選7位通過の小武芽生選手は残念ながら配信でその姿を見ることが出来なかった。
スコアを確認すると5クリップしたところでフォールしてしまったのか14位となった。
彼女の強さは皆が知っている。次戦に期待したい。

スピード種目

予選の結果が公式で正しく反映されていないのか、リード種目でセミファイナルに出場が決まり、戦略的にスピード種目の参加を見送ったのか定かではないが、予選の結果はここでは割愛する。

特筆すべきはモンゴルの選手Nyamdoo Kherlen選手がベスト4に入ったことだろう。強豪のロシア勢相手に大健闘する結果となった。
また7位に中国のDingfeng Zhang選手が入ったり、少しずつロシア一色という状況が変わりつつある。
カナダのBOUFFARD David選手が8位につけた。
彼はKayland社の最新フルートブーツで戦っていたのが印象に残った。

一方女子でも変化があった。
6位に中国のcancan han選手がランクイン。
リードでも活躍しているフランスのThomas Marion選手が7位、フィンランドのBertling Enni選手が8位と健闘している。
余談だが4位となったTimokhina Ekaterina選手は昨シーズンまでKoshcheeva Ekaterina選手として活躍していた。

スピード種目リザルト

女子

順位 名前
1 Bogdan Valeriia RUS
2 Tolokonina Maria RUS
3 Vlasova Alena RUS

男子

順位 名前
1 Nemov Anton RUS
2 Glazyrin Nikita RUS
3 Kuzovlev Nikolai RUS

表彰台は変わらずロシアが独占することになった。

リード種目決勝

白熱の決勝はフランスのLadevant Louna選手が逆転勝利となった。
4位に付けたLadevant Tristan選手。
昨シーズンはTristan選手が決勝まで行けず兄弟揃ってファイナリストとは行かなかったが、今シーズンは兄弟揃ってファイナリストとなった。
Louna選手の優勝が決まり兄弟で抱き合うシーンが感動的だった。

女子の結果はSHIN WOONSEON選手が終始安定した登りを見せ圧倒的速さでトップアウト。
Tolokonina Maria選手を抑えて優勝した。
Thomas Marion選手も3位に付けており、今期のフランス勢はかなり強い。

我らが竹内選手の結果は!?

女子決勝2番手で登場した竹内春子選手、順調に高度を稼ぎルーフにぶら下がるマグロへ…。
マグロから天井に貼りつく次の1手が遠い核心部だ。
マグロに乗り移り先にクリップを試みるも揺れるマグロに苦戦。
残念ながらここでタイムアップとなる。
結果は7位となった。

結果は7位となったが、アイルランドの猛者McSwiggan Eimir選手と肩を並べる結果となったことは誇れる結果だろう。
その上のGoetz Sina選手、Vlasova Ekaterina選手にも迫る勢いだ。
彼女らしく楽しみながら次戦の韓国でも活躍を期待したい。

世界に通用する力を見せた竹内春子選手

リード種目リザルト

女子

順位氏名
1SHIN WOONSEONKOR
2Tolokonina MariaRUS
3Thomas MarionFRA
4Goetz SinaSUI
5Vlasova EkaterinaRUS
6McSwiggan EimirIRL
7竹内春子JPN
8Minina DariyaRUS

男子

順位氏名
1Ladevant LounaFRA
2Safdarian Korouyeh MohammadrezaIRI
3PARK HEEYONGKOR
4Ladevant TristanFRA
5KWON YOUNGHYEKOR
6Kurochkin IliaRUS
7Clair NathanFRA
8Dengin AlexeyRUS