Saint-Petersburg Drytooling Cup

2019年12月20日・21日、ロシアはサンクトペテルブルクにてドライツーリングのコンペティションが行われた。
日本からは男女1名ずつで中島正人選手、竹内春子選手が出場した。
またKwon’s Drytooling Academyでお馴染みのKwon Yonghye選手も出場した。

元々、今シーズンのアイスクライミングワールドカップの初戦がモスクワで予定されていたが、諸々の事情により開催されなくなってしまった。
この事態を受けてロシアのギアメーカー、Krukonogiが関係各所に働きかけ、急遽コンペが開催される運びとなった。

舞台となったサンクトペテルブルク

ロシア西部に位置するサンクトペテルブルクは、世界三大美術館のひとつ、エルミタージュ美術館や世界遺産が数多く点在するロシア第二の都市だ。
そんな芸術と歴史の都で行われた本大会、その模様をお伝えしたい。

屋外と屋内の会場

会場は、垂壁からトラバースしてルーフに入るラインが目を引く屋外の会場と、ロシアの選手たちが日々トレーニングに励んでいるであろう屋内のジムが会場となっていた。

屋外の会場
下部の様子
屋内の会場

予選

予選は4課題。屋外2課題(フルートブーツを使用)、屋内2課題(クライミングシューズを使用)で行われた。

日本の中島選手は惜しくも11位、竹内選手は2位となり、竹内選手が決勝に進んだ。

ライブ配信された映像では定点で撮影されているシーンが多かったため、課題の詳細な様子をうかがい知ることが難しかった。
幸い、Kwon選手のyoutubeチャンネルで各課題の様子を確認することが出来たので、まずはそちらを紹介しておく。

課題1

課題2

課題3

課題4

フッキングは必ずしもピックを使うとは限らない

特筆なのは予選3課題目、下部の長いトラバースを経て傾斜壁をあがり、ルーフやキューブに入っていくというものだが、注目なのはルーフに入る手前の垂れ下がるチェーンで、どのような手段で次のホールドを保持するかがキモとなる。

Kwon選手はここでアックスのグリップをチェーンにひっかけ、見事に突破して行った。
昨シーズンのIWCでシリンダー型のホールドにグリップを引っ掛けて突破する選手がいたのが思い出される。
現場でこれをとっさに判断できる柔軟な発想はさすがトップ選手といえよう。

日本人選手をピックアップ

辛うじて中島選手と竹内選手が登っているところが分かったので、2人のアツイ登攀を見ていただきたい。

中島選手

https://youtu.be/_j5n_6rl0IQ?t=5842

https://youtu.be/h7JhQkX0jZs?t=4116

竹内選手

https://youtu.be/_j5n_6rl0IQ?t=6837

https://youtu.be/TU3y7wRY0B4?t=4590

決勝

決勝は再びフルートブーツで屋外の会場で行われた。
それぞれ結果を見ていきたい。

女子リザルト

順位 名前 ポイント
1 Ekaterina Vlasova 15.262
2 Haruko Takeuchi 14.260
3 Maria Nefedova 10.210

女子の優勝はEkaterina Vlasova選手となった。
昨シーズンのIWCで名前を見ることがなかったので、これまでの成績を調べると、以下が判明。

  • 2016年
    • ロシアカップ優勝
    • IWC総合2位
  • 2017年
    • ロシア選手権優勝
  • 外岩
    • Ironman D14+

1年のブランクを経て復帰を果たした彼女は変わらず強い選手だとわかった。
昨シーズンの覇者、Tolokonina Maria選手との上位争いに今シーズンのIWCは期待したい。

そしてポイント差1.002で惜しくも2位となったのが日本の竹内選手だ。
シビアなホールドが続くなか慎重に手を進め、トップまで残りわずかというところでタイムアップとなった。
惜しい結果ではあったものの、ロシアの強豪選手を相手にここまでの結果を出せたことは快挙と言ってもいいだろう。

https://youtu.be/SJPo70VkXwA?t=3945

男子リザルト

順位 名前 ポイント
1 Kwon YongHye TOP
2 Nikolai Kuzovlev 17.290
3 Ilia Kurochkin 17.282

決勝課題の核心はルーフセクションのキューブに乗ってからの一手だ。
自分がいる面から直角のところに次のホールドがあるのだが、見えない位置になるため、各選手苦戦を強いられた。

そんな中、優勝はKwon選手となった。
様々なメタルホールドが出現してきたがどれも安定したフッキングで決勝課題を唯一完登しての勝利となった。

昨シーズンIWCのトップ、Nikolai選手は予選1位通過だったため、最終登攀者となったが、ゴール手前にあるホールドでまさかのふい落ちで幕を閉じる結果となった。
特段外れそうな動きをしていたわけではないように思えたが、ドライツーリングではままあること。もはやコンペの魔物につかまってしまったと思うしかない。


アイスクライミングワールドカップ前哨戦となった今大会、いよいよ年明けから始まる今シーズンも、アスリート達の活躍を期待したい。