UIAA アイスクライミングワールドカップ2019 最終戦 アメリカ

2019年2月23・24日、アメリカのデンバーにてアイスクライミングワールドカップの第6戦(最終戦)が行われました。
YoutubeのUIAAチャンネルから最終戦のセミファイナルとファイナルの模様を見ることができます。

今までの会場は山間部にあったため、会場まで足を運んで観戦しようという人は限られていた状況ですが今回は都市部での開催とあってかなりの数の観客が集まりました。

特設の会場はキューブが多数ぶら下がり、空中戦を想定した構造になっていました。
エンターテイメント性溢れるインスタ映え必至な作りとなり、最終戦にふさわしい舞台でした。

日本からは男子2名、女子1名が参加。

リード種目ファイナルの様子

リード種目セミファイナルの様子

スピード種目ファイナルの様子

予選

リード種目男子は橋本翼選手が21位、門田ギハード選手が9位。
女子は竹内春子選手が9位となりました。
男女ともに1人づつ予選を突破しました。

明暗を分ける核心部

リード種目セミファイナルのルートは男女共に核心部がわかりやすく、そこを越えられたかどうかによってファイナルへの道が決まったように思えました。

男子の課題では空中戦に入った最初のキューブから次のヘキサゴンボックスのホールドを取りに行くところが核心でした。
そこへたどり着いた選手は必死に手を伸ばし、キューブを揺らし、何度も何度もトライしている状況でした。
アメリカチームのエース、LINDLAU KEVIN選手やD16をRPしたカナダのMCARTHUR GORDON選手などが力尽きてフォールしていく中、日本の門田ギハード選手がこの核心を見事に突破し決勝にコマを進めました。

女子の課題はボテの頂点についたホールドから次のボテについたホールドを取りに行く一手が非常に遠く、何度も手を出す選手が多くいました。
さらに苦労してそこを越えた先に、キューブに乗り移る場面でシビアなホールドが出現し、多くの選手がそこでフォールしていました。
竹内春子選手も順調に高度を稼ぎましたが、空中戦に入ったところでフォールしてしまい、9位となりました。あと一手出せていれば決勝に行けただけに、その差が非常に悔やまれます。

男女ともファイナル常連選手はさすが。
核心部を難なく越えていき、決勝に進んでいきました。
ここで1番魅せてくれたのはロシアのDENGIN ALEXEY選手でした。
最終ホールドのあるヘキサゴンボックス手前、ルーフセクションを上がりランジの態勢から飛ぶかと思いきや、ルーフセクションのカンテ部分を掴み身体を一気にヘキサゴンボックスに寄せてそのままボックスの上部へ乗ってしまいました。
残念ながらそこでタイムアウトとなりましたが、度肝抜くムーブで盛り上がり、デンジンスクリームも飛び出して非常にエキサイティングでした。

日本の最高位タイ記録

SONG OK DO選手のいきなりの不意落ちから始まったファイナル。
不穏な空気の中、続く日本の門田ギハード選手、スタートのアイスセクションから、ドライパートへ素早くうつり、下部のセクションを順調に進めていきましたが、ボテ下のつららホールドがなかなか保持出来ず、フォール。8位という結果になりましたが2011年の吉田貢選手と並ぶ大記録となりました。

ヤニックジャンプ再び

最終戦のファイナルは今シーズン第3戦で衝撃的な登りを見せてくれたGLATTHARD YANNICK選手が見事に優勝しました。
男子のルートでは空中戦に入る時と最終ホールドに移る時の2箇所ランジをするところがあり、2箇所とも華麗な跳躍を見せたGLATTHARD YANNICK選手が堂々の優勝。
トップアウト後のヤニックジャンプを再び見せ、観客を楽しませていました。
しかしあのジャンプはトップ選手とビレイヤーの神テクニックあってのもの。
良い子は絶対に真似をしてはいけません。

PARK HEEYONG選手、DENGIN ALEXEY選手、KWON YOUNGHYE選手らは、最初のランジでフォール。ここを越えたられた選手が表彰台に立ちました。

注目なのは3位のSYPAVIN VALENTYN選手。
ウクライナ代表で今シーズン初出場で見事に表彰台に立ちました。
彼はセミファイナルでも6位で通過しており、手堅く慎重な登りが印象的でした。

マリア無双

そしていよいよ女子の課題にもランジが出てきました。
最終ホールドを掴むには絶対に飛ばなければ届かない距離。
そこへたどり着けたのはTOLOKONINA MARIA選手とSHIN WOONSEON選手の2人だけ。
SHIN WOONSEON選手はなかなか飛べず、タイムアウト後にようやくホールドをキャッチ。時間内に飛べていれば優勝していたかもしれません。
しかしケガのリスクも考えると中々飛ぶに飛べないのは容易に想像が付きます。
TOLOKONINA MARIA選手は意を決して飛び、ホールドを捉えきれずフォールしてしまいますが、最終戦の勝者となりました。
終わってみれば第3戦以外全て優勝という結果になりました。

リード種目男子

順位 選手名
1位 GLATTHARD YANNICK SUI
2位 KUZOVLEV NIKOLAI RUS
3位 SYPAVIN VALENTYN UKR

リード種目女子

順位 選手名
1位 TOLOKONINA MARIA RUS
2位 SHIN WOONSEON KOR
3位 MCSWIGGAN EIMIR IRL

スピード種目:咆哮とハイキック

最終戦スピード種目、ほかの会場と違ったのはロシア選手のエントリーが少なかったため、決勝ラウンドに進出したのがアメリカ、カナダ、オランダ、スイス、ポーランド、フランスと多くの国が進出することになりました。

アメリカ大会のスピードウォールはおよそ掛かるところが無さそうなのっぺりとした見た目で各選手の登る姿を見ても非常に登りにくそうでした。
そんな中やはりTOLOKONINA MARIA選手とKUZOVLEV NIKOLAI選手は圧倒的に速く見事に優勝していました。

優勝決定戦、KUZOVLEV NIKOLAI選手の勝利の雄叫びは非常にカッコ良く、TOLOKONINA MARIA選手の空中ハイキックはクールかつ可愛く決まっていました。

ほかに男子3位決定戦が接戦となり盛り上がりを見せたり、セミファイナルではアイスフィフィではなくアイスアックスで登る選手がいたりと見所がありました。

スピード種目男子

順位 選手名
1位 KUZOVLEV NIKOLAI RUS
2位 BOUFFARD DAVID CAN
3位 GREBENNIKOV DMITRIY RUS

スピード種目女子

順位 選手名
1位 TOLOKONINA MARIA RUS
2位 JARY CORALIE FRA
3位 THOMAS MARION FRA

政治的な障壁

今大会はアメリカで開催ということもあり、上位常連のイラン選手の姿がありませんでした。
リード、スピードと強いSAFDARIAN KOROUYEH MOHAMMADREZA選手や、スピード専門のBEHESHTI RAD MOHSEN選手、紅一点第5
戦で活躍したMOOSAVI ZEINABKOBRA選手などほかの会場で存在感を放っていただけに、最終戦に出たくても出られなかったかもしれないと思うと非常に残念に思います。可能な限りフェアな状況であって欲しいものです。