2019年1月27・28日、スイスのザースフェー(またはサースフェー)でアイスクライミングワールドカップの第3戦が行われました。
youtubeのUIAAチャンネルからセミファイナル及びファイナルを見ることができます。
スイスの会場は屋内。立体駐車場の螺旋状スロープの空洞部分を利用した、奇想天外なスペースで行われました。
屋外からの様子
屋内の様子
観客はスロープのところから観戦することができるようになっていて、間近で選手達が登る姿を見ることができます。
今回はアイソレーションルームの映像もチラリと映り、どのように選手達が過ごしているのか見ることができました。
日本人選手は男子2名、女子3名が参加。
リード種目ファイナルの様子
リード種目男子セミファイナルの様子
リード種目女子セミファイナルの様子
スピード種目ファイナルの様子
予選
リード種目男子、伊藤権次選手は予選41位。
中島正人選手は24位。
予選は2ルートありましたが2本とも完登者続出で同率1位が19人に!
中島正人選手は1本完登、2本目もあとちょっとで完登というところまで行っていただけに惜しかったです。
女子は橋本久美子選手がまたしてもギリギリで予選通過ならず。悔しい限りです。
本戦からプロアイスクライマー八木名恵選手が参戦!
予選25位という結果に。次戦以降プロの意地を見せられるか。
唯一予選を突破したのは竹内春子選手。
手堅く勝ち進めました。
セミファイナル アイスバレルが肝
昨年ドライツーリングアカデミーを開いてくれたKWON YOUNGHYE選手。その奥さんであるKIM JUNG-MIN選手(韓国は夫婦別姓が一般的)からセミファイナルが始まりました。
慎重に手を進めていきましたがアイスバレルが出てきたところで残念ながらフォール…。
続く竹内春子選手、KIM JUNG-MIN選手と同様にアイスバレルまで到達するものの、アイスバレルの処理に苦慮し力尽きました。
普通の木のマグロと違い、ぶら下がっているときに感じる重さや温度など今までに体験したことのないものだったのでしょう。
経験を活かしてもらい、次に期待したいです。
本領発揮のスイス勢
スイスは強い選手が沢山いました。
「アレ!ヴィヴィ!(ガンバ!ヴィヴィ!)」と会場から多くの声援が上がっていたLABARILE VIVIEN選手や、セミファイナル2位、ファイナルも2位につけたGOETZ SINA選手。
男子ではスイスのニコライことPRIMEROV NIKOLAY選手もセミファイナル3位、ファイナルでも3位でした。
そしてセミファイナル1番手でいきなり圧巻の登りを見せたGLATTHARD YANNICK選手がすごかったです!
彼のアックスは旧式のフュージョン。
各国の選手が最新のギアを使う中、一昔前にコンペティターが良く使っていたアックスで「道具なんて関係ない」と言わんばかりの登りを見せ、そのままの勢いでファイナルで優勝をさらっていきました。
結果、女子は5人セミファイナル、内2人がファイナルまで。
男子は7人セミファイナル、内3人がファイナルで、男女合わせて3人がメダリストとなりました。
リード種目決勝
結果は以下の通り。
ロシアの牙城が崩れ、開催国スイスが強さを見せました。
韓国女子ツートップは第2戦の汚名返上といったところでしょうか。
リード種目男子
順位 | 選手名 | 国 |
---|---|---|
1位 | GLATTHARD YANNICK | SUI |
2位 | KUZOVLEV NIKOLAI | RUS |
3位 | PRIMEROV NIKOLAY | SUI |
リード種目女子
順位 | 選手名 | 国 |
---|---|---|
1位 | SHIN WOONSEON | KOR |
2位 | GOETZ SINA | SUI |
3位 | SONG HAN NA RAI | KOR |
表彰台常連、Tolokonina Maria選手が今回下部でまさかの不意落ちという事態には皆驚いたことでしょう。
そしてGLATTHARD YANNICK選手が完登し、地上に降りたあと各国選手から手荒な祝福を受けたシーンも印象的でした。
スピード種目 いきなりのファイナル
スピード種目女子は参戦人数が少なかったため、予選はなくいきなりの決勝となりました。
日本人選手3名もバッチリ中継されました。
スイスでは会場キャパシティの関係上1レーンしかないため、デュエル形式ではなく3登して最も早い結果を最終結果とするスタイルで行われました。
全員参加のため、圧倒的に早い選手とこれから伸びる選手との開きがかなりあり、若干予選のような雰囲気に感じられました。
選手たちも笑顔を見せることが多く、和気あいあいといった感じです。
なかでも今大会唯一チェコ共和国(CZE)からの参戦、Louzecka Aneta選手のアイスフィフィを持たずにスタートに着いてしまい、係員からフィフィを渡される一幕にビッグスマイルで応えていたのがラブリーでした。
最終的に勝者はBOGDAN VALERIIA選手。
2000年生まれのティーンエイジャーでした。
末恐ろしいです。
男子決勝では2巡目、KUZOVLEV NIKOLAI選手が出した好記録に対し直後のNEMOV ANTON選手がそれを超え、さらにIURLOV VLADISLAV選手がそれを塗り替えるという首位争いが見ものでした。
速いものが勝つというシンプルさが見ていて熱くなります。
スピード種目の結果はご覧の通り。
スピード種目男子
順位 | 選手名 | 国 |
---|---|---|
1位 | NEMOV ANTON | RUS |
2位 | IURLOV VLADISLAV | RUS |
3位 | KUZOVLEV NIKOLAI | RUS |
スピード種目女子
順位 | 選手名 | 国 |
---|---|---|
1位 | BOGDAN VALERIIA | RUS |
2位 | Ekaterina Koshcheeva | RUS |
3位 | SAVITSKAIA NATALIA | RUS |
スイスのスピードウォールは韓国と同じようにアイスブロックを積んで作られているようですが、中央にスキマがあって各選手登りにくそうでした。
どのような環境でも安定して速く登れるロシア人選手たちは普段どのようなトレーニングをしているのか気になるところです。