熱き氷上の戦い!岩根山荘アイスツリーカップ2019【イベントレポート】

2019年2月23日〜24日、長野県川上村・岩根山荘アイスツリーを舞台にアイスツリーカップ2019が開催されました。

近年、アイスクライミングのコンペと言えば、アイスセクションがルート全体のほんの一部しかないドライツーリング主体の大会を指すことが多いのですが、今回は違います。
バウンダリー(制限あり)とスピードクライミングの2競技が組み込まれた希少で純粋なアイスクライミングの大会に仕上がっていました。

バウンダリーラインを見つめる参加者たち
バウンダリーラインを見つめる参加者たち

男女それぞれファンクラス、エキスパートクラスに分かれて、1日目にバウンダリーの予選課題を登ります。

各クラスの参加人数は以下の通り。
男子エキスパートクラス11名
女子エキスパートクラス6名
男子ファンクラス11名
女子ファンクラス5名

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エキスパートクラスは男女ともにドライツーリング愛好家が多い中、これまでのドライツーリング主体のコンペでは姿を見せなかった実力派アイスクライマーの参加も目立ちました。
一方で、ファンクラスはコンペ未経験者はじめ、アイスクライミング歴が短い選手も出場できるアットホームな雰囲気があるのが特徴です。

昨年行われた、モンチュラ・ナナーズカップ2018では、ビギナークラスにも上級アイスクライマーの出場が目立った印象がありましたが、今シーズンは出場選手のクラスがしっかり区分され、誰もが楽しめる大会であったと感じます。

コンペ内容

バウンダリー予選課題はファンクラス、エキスパートクラスそれぞれ4課題が用意され、1人同じルートを2回までトライすることが可能です。クラス別に男女とも同じルートを登りますが、女子専用のお助けバウンダリーもありました。
1ルートは3分の制限時間が設けられ、完登数でスコアがつきます。完投数が同じ場合、合計タイムが短い方がより上位になり、上位勢は必然的にスピード勝負となります。
尚、予選から決勝までの全課題トップロープ方式が採用されています。

スピード競技

2日目は、早朝からスピードクライミングの競技が始まりました。スピードクライミングはアイスクライミングワールドカップでも行われるれっきとしたクライミングジャンルのひとつなのですが、日本ではアイスクライミングのスピード競技を志す選手が極端に少なく、これまで公式大会が行われることはありませんでした。

昨年のモンチュラ・ナナーズカップ2018、一昨年のモンチュラカップ2017では、予選敗退した選手だけが参加できる余興としてスピードクライミングが行われていました。

そういった点から、本大会は日本のアイスクライミングのスピード競技における歴史的な第一歩を踏み出したと言えるかも知れません。

アイスクライミングのスピード競技
アイスクライミングのスピード競技
スピードクライミング用アイスフィフィ
スピードクライミング用アイスフィフィ

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バウンダリーセミファイナル以降は一発勝負

その後、競技はバウンダリーに戻ります。各クラス全員が参加できる形式のセミファイナルを行い、この成績の上位6名がファイナルへの切符を手にします。

ファイナルは制限時間6分の一本勝負。これまでより難易度の高い課題が用意され、完登できなかった場合、到達高度で順位がつきます。
男子はドライツーリング愛好家の内山紀貴選手が到達高度の差で悲願の初優勝を果たしました。
女子は橋本久美子選手がワールドカップ選手としての意地を見せ、唯一完登者となり、見事に優勝となりました。

入賞した選手たち
入賞した選手たち
入賞した選手たち
入賞した選手たち

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バウンダリー競技における課題

決勝戦では、VAR(ビデオアシスタントレフリー)が用いられ、バウンダリーアウト(線をはみ出すこと)疑惑の登りについては、最終的にジャッジが覆る結果が出ました。自然物を登攀対象とするアイスクライミングの性質上、それを含めて競技として考えるべきとも言えますが、ジャッジ側の判定基準の難しさもこの競技特有の課題となります。

希少なアイスクライミングのコンペ

これまで登攀対象をアイスに絞った純粋なアイスクライミングのコンペがありそうでなかったため、それだけで非常に価値のある大会だと思います。
氷の状態を見極める判断力、アックスをコントロールするテクニック、無理な体勢をキープするための強いフィジカルなど、実に様々な能力が必要とされるため、アルパインや他のスポーツクライミングを本業とする選手にも今後是非参加して欲しいと思うコンペでした。

今大会ほとんどの選手がフルートブーツを着用
今大会ほとんどの選手がフルートブーツを着用
企業ブースも充実
企業ブースも充実