2022年5月14日(土)、長野県上田市のドライツーリングウォール「たらこウォール」にて、ドライツーリング講習会が開催された。
今回はTARA SESSION(たらセッション)というイベント名であったが、単なるセッション練習会というわけではない。講師である賀門尚士氏のドライツーリング理論を学ぶ座学パートと、それを実践する練習パートに分けられており、全体を通して緻密に練られた構成となっていた。
そんな講習会の内容を一部ご紹介したいと思う。
座学パート
第1回開催となる今回は定員となる8名の参加者が集まった。コンペでは常連の顔ぶれだが、上級者向きの講習会というわけではない。
まずは肩をほぐすストレッチの指導から始まり、3パターンのストレッチを終えて、早速練習会が始まるかと思いきや、賀門氏が参加者に問いかける形式で、座学パートが始まった。
テーピング
「皆さん指にテーピングは巻いていますか」と、まずはテーピングの巻き方についてのコツを伝授してもらえるかと思っていたが、そうではなかった。賀門氏曰く、テーピングの巻き方は、使っているアックスのグリップ形状次第で変わってくるものであり、そのグリップは荷重した際にどのような形状でバランスを取っているのかを理解することが重要だと言う。
賀門氏の使っている韓国製アイスアックスのオクタは、グリップが垂直に近い形状でバランスを取るため、荷重した際に小指側に大きな負荷がかかる。一方で、グリップが水平に近い形状でバランスを取るアックスもあり、それによって指にテーピングを巻く最適な箇所が変わってくるという。
グリップテープとグローブ
次にアックスの持ち方であるが、基本的には持たずにただ指をかけるだけの状態が最も省エネであるという。また、そのためにフリクション性能を高めるグリップテープとグローブの相性は重要であり、このあたりの考察が長々と説明された。
個々に使っているアックスの違いがあるため、まずは自分が使っているアックスの特徴を理解したうえで、持ち方やテーピング、グローブを正しく選択できているかを参加者に問いかける内容となった。
実践パート
すでにここまでで1時間以上かけて知識を吸収し、次にそれを実践するパートに移行する。
いくつかの軽めのドライツーリングルートが用意されているが、これが実に緻密に練られており、コンセプトを理解できずにムーブを起こすと、簡単に弾かれる。
ホールドを理解すること
賀門氏曰く、インドアのドライツーリングでは、ホールド毎にアックスの先端がかかる向き先が決まっており、それは変えることはできない。また、それを保持するためには、適切なポジションに身体を移動させる必要がある。
つまり、ホールド毎にあるアックスのかかる向きを理解し、それに合わせて身体を移動させていく行動の連続でムーブが起こせるという。
ちなみにこの理屈だと、ただ重力方向にぶら下がっているだけのフィギュア4は非常に楽なムーブになるという。
脱力すること
前述の通り、ドライツーリングは正しい方向にアックスを引っかけて、適切なポジションを取っている限り、落ちることはないのだ。
つまり、力を入れる必要はまったくなく、いかに脱力してアックスを持てるかが重要になる。
実際にやってみると、緊張感のある局面では無意識にアックスを強く握り込んでしまうクセのある人は少なくない。論理的に理解したうえで、意識して練習することが大切なのだろう。
アドバンス的な要素も多々あり
実践パートは2グループに分かれて行い、計4課題にトライした。人それぞれに体格差もあるため、ムーブに共通の正解は存在しない。各自で自分のムーブを見つけるしかないのだ。
基本講習の後も、強傾斜でのダイナミックな動き方、ルーフでのフィギュア4などのムーブについての講義が展開された。
また、すべての課題で賀門氏のお手本を見ることができ、パワーやリーチに偏ることなく、圧倒的な論理と技術によってドライツーリングを解析していく様は実に圧巻だった。
まとめ
たらこウォールでは今後も不定期でドライツーリング講習会を開催していくということなので、本気で強くなりたいと思う方に是非おすすめしたい。
特にコンペで上位を目指している人、岩場での高難度課題の登攀を目標にしている人は必見だ。