真剣勝負の草コンペ!DEKUNO CUP 【コンペレポート】

2021年10月16日、緊急事態宣言の明けたタイミングで久しぶりにドライツーリングのコンペが開催されたので、そのレポートをお届けしたい。

ドライツーリング愛好者たちの草コンペ

例年だと、年に数回のドライツーリングコンペが各所で開催されているのだが、昨今の社会情勢の影響下では、なかなか開催が難しくなっている。

今年は、3月開催のモンチュラ・ベータドライツーリングカップ2021以降、特に何もない状況が長らく続いていたが、日頃のトレーニングの成果を発揮する舞台を求めて、有志メンバーによる草コンペ開催の企画が持ち上がった。

戦いの舞台は青梅ゴリラウォール。出場選手は前回モンチュラカップ参加者を軸に、招待枠と推薦枠で精鋭7名のエントリーとなった。

セッター

今大会は、ドライツーリング愛好家のdekuno.drytooling氏がセッターを務めることになった。これまでルートセットの実績はないが、選手としてコンペで培ってきた経験をもとに、どのような課題を展開してくるかに注目が集まる。

予選課題

フラッシュ方式の2課題で、2課題とも1手1手の距離は短く設定されており、如何に早く手を出すかが求められる課題となっていた。
制限時間は7分。
フォールしても再トライ可能となっている。
ゴリラウォールは空間を有効に使うため、今いるところから背面の壁に取り付いたりする3D的な感覚が必要であったり、きつい傾斜のなか連続してムーブを出していくといったことが特徴としてあげられる。

フラッシュ方式1課題目

傾斜壁からスタートし、数手出して天井にあるマグロを中継して背面の垂壁へ、アンダーからアンダーのムーブをこなしその後トラバースしていく。
やがて強傾斜にアンダーで入っていくが、ここからの7手がこの課題の核心となる。そこを抜ければ数手でゴールとなる。

安定した登攀技術を発揮する笹川選手(銀嶺会)

難しいムーブは出ることはなく、基本的なムーブが出来ているかを問われる課題であった。だからこそ、経験者にとってはつまらないミスをせず、登攀速度を上げていくことを求められ、経験の浅い挑戦者には練習してきたことができるか試されるというどちらの立場にいるものにも緊張感を持たせる課題となった。

ダイナミックなムーブを多用するフュージョン使いの宮崎選手

コンペで初めて触るホールドのこわさ

引用元:krukonogi-titanium.com
バイコヌールホールドで浮きアンダーする内山選手

1課題目は、初めて触れるkrukonogiホールドに警戒する場面もあった。
1つめは2本の円柱が円盤から垂れ下がる異形のホールドで、ボテの下部に設置されており、2本の円柱の間にピックをあてて浮きアンダーで突破していくというものだったが、アンダーに入る時に身体が下がっているとピックがぬけてしまうという上手い作りになっていた。
Baikonur(バイコヌール)と名付けられたそのホールドは、その名にふさわしく宇宙へ向けて飛び立つロケットのように、重力に逆らうようなムーブを我々に強いてくるものだった。
もう一つはGravitsapa(グラビタサパ?)というホールドで、 円盤に逆八の字に埋め込まれた円柱にフッキングするというもので、八の字の狭まっている部分にピックをかけることができるが僅かな隙間があり、初めて触るホールドのため抜けてしまうのではないか?と緊張を強いられる場面があった。
今回は素直な設置になっていたため、トライしてみると難なく突破できたが、取り付ける角度によっては牙をむくホールドであっただろう。

フラッシュ方式2課題目

序盤は垂壁に取り付けられた、バランシーな配置のホールドを拾いトラバースしていく。体重移動を意識して手を進める必要があるが、会場の角でかつフットホールドが乏しいため簡単には進ませてくれない。
課題折り返しの15手目で天井のマグロを介して背面の壁へ移動し、クライムダウン。少し傾斜のある面で大きく一手を出した後、外傾したホールドをしっかりおさえて次をとる。ここの一手は事前のセッターによる試登動画でもフィギュア4をしており、慎重に進める必要のある一手であった。
そこが終わったらマグロを介して背面の垂壁にもどり慎重に手を進めてゴール。

1課題目同様、如何に早く正確に手を進めるかがカギとなる課題で、最大傾斜壁を使わない優しめの設定となっていた。

成長著しい佐々木選手も奮闘
予選課題完登のテクニシャン田名網選手

決勝課題

決勝とは言え全員がトライ可能で、予選同様の30手の課題となる。
こちらはオンサイト方式で、フォールの場合はその時点で競技終了。

ルーキー山内選手は持ち味のフィジカルを活かす

スタートからつぶつぶでお馴染みのインタレクトホールドが続き、慎重な動作を求められる。
それを抜け天井のマグロから背面の垂壁へ遷移し、スリッピーなメタルホールドをおさえながら、すぐさま背面のホールドへ手を出す立体的な動きとなる。
強傾斜に入り、そこから大きめのムーブを1つ2つ起こし、強傾斜を抜け垂壁をトラバース。終盤の26手目で天井のマグロを経てスタート地点へ戻る周回課題となっていた。

圧巻のパフォーマンスを見せた森田選手

リザルト

立体的な動き、強傾斜でのムーブ、課題の時間配分などをしっかり行えた3名が完登となった。最終結果を上位3名まで掲載。
得点は各課題の順位の積で算出。数値が小さいものが上位となる。

順位 名前 得点
1位 森田修弘 1pt
2位 宮崎正章 8pt
3位 笹川淳子(銀嶺会) 18pt
連続するつぶつぶ(インタレクト)ホールド
強傾斜での一手

まとめ

小規模ながらコンペという形式で行われた今大会であったが、やはり規模の大小関係なくコンペは緊張を伴い、その中で自分の力を出し切るという行為には、各選手とても良い刺激になったのではないかと思う。
若い選手の参加もあり、コンペの面白さを体験してもらえたことも大きな成果であったと確信している。
競技終了後の課題解説や即席課題を設定してのセッションなど、緊張の計90手を出した後にも拘わらず、果敢にトライする姿があった。
dekuno.drytooling氏のセットが全体的に優しめであったのは手数が多いこともあるが、コンペで課題を完登する喜びを知ってもらいたいという思いがあったからだろう。
彼らの今後の成長を期待したい。