突撃潜入レポート。ドライツーリング入門〜橋本翼編〜

ベータクライミングジムで毎月開催されているドライツーリング入門に新たな講師として橋本翼が登場。現役トップ選手がどんな練習会を展開したのか。その様子をお届けしたい。

講師プロフィール

決勝課題を登る橋本選手
橋本 翼(はしもと つばさ)
ドライツーリング愛好家。
大会規模の大小問わず、国内外のコンペティションに参戦し続ける一方で、国内で難関とされるドライツーリング、ミックスクライミングの課題にも挑戦している。

略歴
・モンチュラ・ナナーズカップ2018 オープン男子5位
・昭島ドライツーリングコンペ1st 男子優勝
・昭島ドライツーリングコンペ2nd 男子優勝
・モンチュラドライツーリングチャンピオンシップ2019 男子優勝
・UIAA Ice Climbing World Cup 2019 Overall Read 42位

・宮城県鎌倉山はやて(D10)RP
・北海道神居古潭斬鉄剣(M11+)RP

強くなるための練習会


これまでの講師陣に比べると、よりプレーヤー視点で物事をとらえ、競技志向をベースにしている橋本氏ならではの考察が凝縮されていた。
これまでのドライツーリング入門は、ドライツーリングを体験すること・知ることを提供する場としての意味合いが強かったが、今回の橋本翼編は、そこにとどまることは決してない。
今の自分に足りないものを各々が感じ取り、それを今後の自主練習でどうやって克服していくかという継続的なトライと、その先にコンペ出場という目標を提案している点が特徴だ。

※ドライツーリング入門の受講者は、以降、イベント以外でのベータクライミングジムの3階エリアでのアックス使用許可が得られる。

座学(10分)


ジェフロウのオクトパシーを皮切りにドライツーリングの歴史を語り始める…と思いきや、5分程度で簡潔に終了。その後、アックスの握り方やグリップテープの巻き方、ゴルフグローブの選び方など実用的なノウハウを話し始める。
グリップテープにはドライタイプとウェットタイプがあること、その特性の違い。ゴルフグローブの素材である羊革と合皮それぞれの特性など。
シチュエーションに応じたギアのチューニングについての講義に参加者は興味深く耳を傾けていた。

アックスにぶら下がる(5分)


最初の練習は、好きなホールドを選んで、そこにアックスをかけたら、ただぶら下がるだけというもの。ムーブは起こさないのだが、このぶら下がった状態を維持するのが超基礎だと言う。その後、片手になる動作を加える。これを垂壁と傾斜壁でそれぞれ行う。

アックスで懸垂する(5分)


ここからクライミングシューズを着用し、先ほどのぶら下がった状態から懸垂を行う。腕を引きつけることで次のホールドを取りに行くムーブに繋がるため、これも極めて基礎的な動作となる様だ。

アックスコントロールの解説(5分)

ショート持ちなど、アックスの持ち方を説明した後、2本のアックスを同じホールドにマッチする動作、口にくわえてからの持ち替え、親指にかける持ち替えの説明を行う。アックスをうまくコントロールするためには練習が必要のようだ。

課題ルートを登る(25分)


ここまで約25分の講習的な内容であったが、ここからすぐに実践へと入る。用意された課題を自由に登るというもの。
登っている最中に細かい指摘は入らない。分からないことがあれば、参加者から講師に自由に質問するという形式で、参加者の主体性を最大限に尊重しているように見える。
また、2ルート同時進行で待ち時間がほとんどなく、簡単な課題であっても登り込むことで負荷のかかる練習内容に仕上がっている。

フッキングにおけるテクニックの説明(5分)


次にクセのあるホールドを攻略するために、ヤンガー、アンダー、トルキング、ガストンなどのコツが説明される。簡潔に5分程度で終了。

ガストン練習(10分)

シビアなメタルホールドを使ったガストンの練習を行う。残す側の手をおろそかにすることで、アックスが外れてしまうことが多いようだ。

トルキング練習(10分)


クセのあるイラン製ホールドが登場。トルキングをかける練習を行う。

やや難しめな課題ルートを登る(35分)


再び、課題ルートを自由に登る練習へと移行する。これまでに説明のあったヤンガー、アンダー、トルキング、ガストンが頻繁に出てくるため、最初のルートよりも難しくなっている。
やはり登っている最中のクライマーに対して、講師はほとんど口を挟まず、参加者主体の練習となる。2ルート同時進行で回すため、とにかく登れる本数が多い。

フィギュア4の説明(5分)


いよいよドライツーリング入門の花形とも言えるフィギュア4の説明に入る。今回は、なぜフィギュア4を使う必要があるのかというところにフォーカスした内容となっている。

フィギュア4の練習(20分)


そしてすぐに実践へ。まずは静止した体勢からフィギュア4、フィギュア9の体勢に移行するだけの練習を行う。まずこの動作ができなければ、次に進むことができないという。これができた人はフィギュア9、4を繰り返しながら空中で横移動する練習を行う。これまでの入門に比べて、フィジカル的にかなりハードな内容となっていた。

切り返しの練習(20分)


2本のアックスを異なる方向へフッキングさせた状態から体重移動させつつムーブを起こす練習を行う。切り返しと呼ばれることがあるが、入門編でこの練習が取り入れられたのは今回が初である。横移動がメインとなるベータクライミングジムの壁では特に重要となるが、慣れるまでは難しいムーブであり、多くの参加者が苦戦していた。

好きなルートを自由に登る(15分)


最後の練習は、各自が好きなルートを2本選んで気持ちよく登るというもの。講師側から課題を強いるばかりではなく、参加者それぞれの意思や嗜好を尊重するスタイルは一貫している。

最後にメッセージ(5分)


練習が終わり、講師側から明確なメッセージが提示されていたので、ここでも紹介しておきたい。

強くなるためにはトレーニングが必要なのは大前提だが、さらに2つ必要なものがあるという。

・仲間を作ること
・目標を持つこと

非常にシンプルで分かりやすいメッセージで締めくくられた今回の練習会。今回の参加者同士が互いに仲間となることは間違いないなさそうだが、さらにもう一つ、目標に対しても提案が…

2019年11月2日(土)、ベータクライミングジムにてドライツーリングコンペが開催決定。
詳細は後日公開とのことだ。

初心者でも参加可能なため、ぜひこの機会を逃さずにドライツーリングにチャレンジしてみてほしい。