突撃潜入レポート!ドライツーリング入門inベータクライミングジム

最近、ドライツーリング愛好家たちの間で話題を集めているイベントがある。ベータクライミングジムにて、ベテランクライマーの榎戸雄一氏が展開する「ドライツーリング入門」だ。
毎月申し込みが殺到するほど人気を博し、ドライツーリング未経験者はもちろん、それまでアックスを握ったことのない入門者でも気軽に参加できることが最大のウリだ。
今回はこのドライツーリング入門のレポートをお届けしよう。

人気の要因は?

平日の夜開催ということもあり、仕事終わりの社会人が主な参加者となっている。アイスアックスやヘルメットのレンタルも可能だが、自身のギアを持参してくる参加者が目立ち、アイスクライミングを経験したことのある人が多い印象を受ける。

ほかのジャンルのクライミングに比べて、やや敷居の高いドライツーリングであるが、東京のど真ん中でインドア開催、高額なギアのレンタル可能で、さらに入門者向けと、ここまで条件の揃ったイベントは他にないであろう。

続いて、内容についても触れていきたい。

座学と実技を兼ね揃えた充実の内容

内容は3時間コースとなっているが、ドライツーリングをゼロから理解できるよう、座学パートと練習パートに分かれている。

ドライツーリングの歴史(30分)


座学パートでは、ドライツーリングの成り立ち、その歴史について学ぶことができる。国内外でのクライミング、ドライツーリングについて造詣が深い榎戸氏の講義は大変貴重なものである。

ドライツーリング愛好家であれば、歴史的な快挙を成し遂げた人物や課題の名前くらいは最低限覚えておくと良いだろう。お話いただいた内容を一部抜粋してお届けしよう。

氷と岩を登攀対象とするミックスクライミングの歴史はまだまだ浅く、1994年、アメリカ・コロラド州のベイルにてジェフ・ロウによるオクトパシー(M8)が初登攀された。氷から岩に飛び移るそのスタイルは当時としては衝撃的であり、同時にそれはドライツーリングという新たなるジャンルの幕開けでもあったという。

さらに話は続き、その数年後のカナダ・バンフで登攀されたケイブマン(M10)、ペツル クォークエルゴ、ブラックダイヤモンド フュージョンなどのリーシュレスアックスの普及、スタイルの変遷など、ドライツーリングについてより深く知ることができる貴重な30分の熱い講義だった。

その後、練習パートに続く。

ドライアイスツールでアップ(15分)


続いて、練習パートでは、ドライアイスツール(通称わっか)を使って、まずは簡単な課題を登る。導入にふさわしく初心者にも登りやすい内容となっている。

アイスアックスとホールドの説明(15分)


このセクションでは、アイスアックスの基本的な持ち方、ホールドへのフッキングについて学ぶことができる。ショート持ち、ロング持ちを使い分けることと、ホールドには基本的にピックの先端でフッキングすることを学ぶ。

アイスアックスを使った練習(15分)

アックスにはテープを巻く
アックスにはテープを巻く


アイスアックスを使って、垂壁でガバホールドメインの簡単な課題を登る。
テスティングをした後、ホールドのかかりが良い部分に対してピックの先端でのフッキングが意識できるかが試される。さらにアイスアックスの持ち替え、サイドフッキングも実践する。

アイスアックスを使った練習その2(20分)


アイスアックスを使って、垂壁でより難しい課題を登る。ここではメタルホールドがはじめて登場し、さらにアンダーフッキングも要求される。核心部はガストンとなっている。

フィギュア4の説明と実演(10分)


垂壁から傾斜壁へと場所を移し、早くもドライツーリングの花形ムーブであるフィギュア4の説明に入る。さらに実演を見ることができる。

フィギュア4の実践(10分)


このセクションでは、傾斜壁でフィギュア4の練習を行う。手首に足をかけること、姿勢を起き上がらせることの難しさを体験できる。苦戦する参加者が多いかと思いきや、ほとんどの参加者が上手くできていた。

フィギュア9、フィギュア4の連続(20分)


空中で足の切れた状態でフィギュア9とフィギュア4を繰り返す練習を行う。非常に強度が高いため、全員が上手くコツをつかめるものでもないが、今回は壁を蹴ることが許容され、空中戦の醍醐味を知ることができる。

トップロープの準備(5分)

スタッフがトップロープを準備してくれる。
参加者はここでハーネスを装備する。

リード壁にて、ドライアイスツールを使ったトップロープクライミング(30分)


ハーネスを履いて、やや高さのある壁をドライアイスツールで登る練習を行った。ルートは2本用意されているが、どちらも5手で終わる課題となっており、核心部はないが、引きつけることができないと手が届かないようになっている。ボルダー壁だけでなく、リード壁も使えるため、幅が広がる練習内容となっている。

イメージトレーニング方法の紹介(10分)

最後にイメージトレーニングの方法が紹介されるという豪華な締めとなっている。UIAAアイスクライミングワールドカップの動画などを紹介され、すべての講義が終了した。

最後に

以上が180分の練習内容の紹介である。
もし、これから新しくドライツーリングを始めてみたいという方がいれば、まずはこの「ドライツーリング入門」に参加することを強くおすすめする。ぜひチャレンジしてみてほしい。

今後も基本的に毎月開催とのことなので、詳細はベータクライミングジムのWEBサイトに確認いただきたい。