2021年の冬シーズンに奥多摩奥秩父アックス登攀部隊が開拓したアイスクライミングエリア「中津川アイスロード」を覚えているだろうか。
このアイスロードの最奥部に位置する奈落エリアに新たにドライツーリングルートが誕生したので紹介したい。
貴重なドライツーリングゲレンデ
日本ではドライツーリングルートが拓かれた岩場は極めて少ない。あまり知られていないが関東では「ムンクの洞窟」と呼ばれるエリアが存在する。一定の登攀技術がなければグランドフォールする危険の高い課題が立ち並ぶため、一部のコアなクライマーの間だけで登られている。
この度、開拓された新エリアは、ミックスクライミングルート「業(カルマ)」に隣接する岩壁にあり、関東圏からの日帰りも可能だ。初級者向けルートも1本あるため、ドライツーリングのスポートルート未経験者にとっては最初の一本の対象にできる。
このエリアは、氷結期はミックス、それ以外はドライツーリングと使い分けられ、アックス登攀技術を鍛錬するうえでは非常に使い勝手が良さそうだ。近隣のアイスルートの氷結具合が良くなかった際にチャレンジしてみても良いだろう。
ミックスクライミングルート「業(カルマ)」については以下参照
ルート紹介
新しく開拓されたルートは3種類のみだが、それぞれ性質の異なる特徴を持っている。それぞれ紹介していこう。
ダンデライオン
- グレード:D6
- ボルト:5本
岩壁に走るクラックラインを辿りながら登るルート。全体的に傾斜が緩く、序盤はホールドも分かりやすく初心者でも取りつきやすいが、中盤からフットホールドが乏しくなるため最後まで気が抜けない。中級者以上は是非オンサイトを狙ってみて欲しい。
紅(くれない)
- グレード:D8+
- ボルト:7本
ボルト3本目まではダンデライオンと同じラインを共有するが、途中で分かれた後はそのまま強傾斜に真っ向勝負となる。ルーフに近い傾斜では、空中でのフィギュア4、9のムーブが必須となるため、ドライツーリング特有のテクニックとフィジカルが試される。
児雷也(じらいや)
- グレード:D9+
- ボルト:7本
スタート直後、傾斜はほぼないが、極めてシビアなホールドを繋ぐ必要があり、冷静さを欠けばフォールする可能性が高い。前者2ルートに比べるとシンプルに直上するだけなのだが、全体的にホールドの距離間が遠く、後半パートは空中でのフィギュア4、9に耐えるフィジカルが必要。全体的な強度が高く、上級者向け。
初登者の動画は以下参照。
エリアへのアプローチ
国道140号から中津川方面へ。王冠キャンプ広場の手前の路肩に駐車後、車両通行止めゲートから徒歩90分。
詳細は、ロック&スノー92号掲載の中津川アイスロードの記事を参照とのこと。
チャレンジする人へ
初登者は一般的なアイスアックス、フルートブーツ(クランポン付きのブーツ)、グローブ(ゴルフグローブまたは軍手)を用いて登攀しています。
ドライツーリングルートはピックのフッキング具合によって、不意にピックが抜けることが度々起こります。スタート時に1ピン目のボルトに予めクリップしておくことを推奨します。
また、落石や落氷、クライマー自身のツールロストにも十分にご注意ください。
情報提供:奥多摩奥秩父アックス登攀部隊
クライミング行為は一切自己責任となりますので、安全に心がけて本サイトの情報をご利用ください。